天冥の標9 ヒトであるヒトとないヒトと

セレス地表にあるシェパード号を目指す一行が目にしたのは、メニー・メニー・シープの成り立ちを知る道でもあった。セレス・シティ復興を望む人々の思いは、共生への道程となるのか。ヒト、救世群、恋人たち、カルミアン、生きとし生けるものたちの運命が交錯する。

震災による巨大津波のニュースを見ているような物語だ。人の悲鳴、家がひしゃげる音、濁流の色、ニュースキャスターの警告、刻々と増加する死者のテロップ。それぞれの言葉や行動に意味があることに気づく。しかし、読者は何もできないまま物語を見つめるしかない。シリーズ第9巻にして、凄まじい旅に付き合ってきたことに気づく。

相沢沙呼 medium 霊媒探偵城塚翡翠

推理小説家の香月史郎は、難事件を解決をする中で霊媒師の城塚翡翠と出会う。半信半疑の香月だったが、事件を通して死者の言葉を聞く。証拠能力のない霊言と、香月の推理力を組みあわせ、事件解決に向かう……。一方、痕跡を一切残さない連続殺人鬼と思われる犯行が続き、その間隔は事あるごとにに短くなっていた。そして犯人のターゲットは翡翠になるが……。

「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内、どちらもベスト1だったので読んでみた。前評判から着地点が見えながらも、どう着地するかが全く予想できず、そのアクロバティックな姿勢が見えてくると、一気に読み終えるしかなかった。第二話『水鏡荘の殺人』が圧倒的な量の伏線が用意されているのに、シンプルな作品に見せているのは見事。今の邦画テイストで映像化される前に、ぜひ読んでほしい。

medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

  • 作者:相沢 沙呼
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/09/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

ザ・チェーン 連鎖誘拐

レイチェルの娘が誘拐された。何者かからビットコインでの身代金、続けて子どもを誘拐しろと要求が入る。次の家族が身代金を支払い、さらに別の子どもを誘拐すれば、娘は解放される。失敗、通報、相談はレイチェルと娘の死を意味する。連鎖誘拐システム「チェーン」に巻き込まれ、被害者であり加害者になったレイチェルだが……。

雑に紹介すると、完全に幸せになれないシングルマザーが暴力と策略の世界に巻き込まれるやつ。メキシコで行われた交換誘拐をベースに、現代アメリカの家族像とダークウェブなど闇社会が合体。波に乗ってしまえば、最後まで一気に勢いで読めてしまう。サブストーリーとして挟み込まれる事件の背景が魅力的。早川書房のゲラ読み募集で機会をいただきました。ありがとう御座いました。年に一度くらい、こういう作品に出会う。