佐々涼子 エンド・オブ・ライフ

京都で在宅医療を取り組む医療従事者たちを取材し、患者の終末期と家族を寄り添うように見てきた著者。友人の看護師が末期がんになり、自身の最後へと向き合うときがきた。著者と難病の母、献身的に介護する父。終末医療の一角を記録する。

2020年本屋大賞ノンフィクション部門で大賞を受賞した、「命の閉じかた」を書いた教科書。患者たちを見る医療従事者と、幕を閉じていくことになる看護師、著者自身の家族の3つの要素を交えながら書く。まさに今、息絶えてもおかしくない女性が家族と潮干狩りに行くエピソードは、太陽の刺さるような痛さまで伝わってくるようだった。家族の愛が潮風と波の心地よさと混ざり合い、涙を止められなかった。

続きを読む

黒木あるじ 怪談四十九夜 鎮魂

新しいアルバイト先に来たお客さんが。学校の先生の一言が。旅先で見たテレビ番組に映ったあれは……。気づいてしまうと、今までの日常には戻れないのかもしれない。現代実話怪談の作家たちによる49話。

祖父宅で食卓に出た「赤いゼリー」(真白圭)。工作で作った人形が動き出す「ダンボールマン」(神薫)。妻の実家で行われる正月の恒例行事「数珠繰り」(つくね乱蔵)。多くの凶作が収録されている中、最後に収録されている黒木あるじの複数話によって、全てを吹っ飛ばしながら読み終えることになる。

続きを読む

阿賀沢紅茶 西馬舜人 正反対な君と僕 サニー&レイニー

少年ジャンプ+で大人気連載中の等身大ラブコメが初の小説化。いつものように元気に投稿した鈴木だったが、谷くんの様子がいつもと違う? 山田に好きな本を貸した西さんは感想が気になって……。少し違う日常を3組の視点で書く連作短編集。

私が知っているラブコメといえば、主人公の周りを複数のヒロインがにぎやかに距離感を測る物語で、主人公ピッチャーが圧倒的に強い野球漫画のような印象だ。今は全員野球のような、周囲とのバランスを考えながら恋を進めるのがトレンドなのだろう。原作マンガ「正反対な君と僕」の大ファンで、文章で読むと解像度が上がる。彼ら彼女らはもっとストレートに生きてもいいのにとも思う。

続きを読む