アンソニー・ホロヴィッツ メインテーマは殺人

殺された資産家の老婦人は、まるでそうなることを知っていたかのように、その日に葬儀の手配を済ませていた。作家のわたし、ホロヴィッツは元刑事ホーソーンの捜査を手伝い、本にまとめる計画を進める。気まぐれな探偵の助手を務めるうちに過去の事故に気づき、被害者の意外な姿が浮かび上がるが……。

この筋立てからこの犯人。当たりまえなんだけど、終盤になって気づかされる犯人という意外性。メインの骨格のために付いた筋肉や贅肉のボリュームがほどよく、気さくで終始微笑んでいる中年男性のような作品だ(性格はとても残酷なやつだけど)。バディものとしての塩梅もよく、楽しい時間だった。シンプルでミステリーの気持ちよさに溢れた1作。続編も読もう。

メインテーマは殺人 (創元推理文庫)

メインテーマは殺人 (創元推理文庫)

有吉佐和子 紀ノ川

絶対的な祖母に育てられた花は、紀ノ川の流れにそって川下の集落に嫁いでいく。男のように豪快で、時代の一歩先を歩もうとした文緒。病弱ながら戦争を乗り越え、変わりゆく紀ノ川を見つめる華子。紀州和歌山の素封家を舞台に、明治から始まる女三代記。

チョ・ナムジュ「82年生まれ、キム・ジヨン」の感想から、Twitterにて女三代記として教えてもらった1作。桜庭一樹赤朽葉家の伝説」も同じく女性の大河小説に家と土地が絡むとたまらん。「悪女について」で有吉佐和子と出会い、年をとっていく女の腹の底の書きかたが本当上手い。著者の作品は少しずつ読んでいこう。

紀ノ川 (新潮文庫)

紀ノ川 (新潮文庫)

モンゴメリ 赤毛のアン

カナダのプリンス・エドワード島にやってきた孤児アン。男手を望んでいたマシューとマリラの兄妹は、空想豊かな赤毛の少女に困惑をする。しかし学校生活や人との交流を通して少しずつ心を開いていく。季節の移ろい豊かに成長するアンの姿を書く。

ドラマ『アンという名の少女』を見て原作を読んでみた。ドラマも草花や景色を意識した構成になっているけど、原作はもっと情報豊かで、時代背景や宗教色、それぞれの心境が書かれて読み応えがすごい! 当時の社会情勢や引用元が巻末で補足され、まるで北米史の教科書のようだ。養母となるマリラが言葉少なで堅物なだけに心を開いた愛を含んだ一言が熱い。終盤、残された時間を意識した心理描写に涙をこらえきれなかった。この年で読めてよかった。

赤毛のアン (文春文庫)

赤毛のアン (文春文庫)