アンデシュ・ルースルンド ベリエ・ヘルストレム 地下道の少女

極寒のストックホルム。警察本部の近くで、外国人の子ども43人が団体バスから置き去りにされた。同時に、病院の地下では顔をえぐられた女性の死体が発見された。グレーンス警部たちは事件を追ううちに、町の深部である地下道との関わりを見つける。しかし、その暗闇の中で待っている真実とは……。

一貫してえげつない重さを表現してきたシリーズ(『制裁』『ボックス21』『死刑囚』)だけど、今回のパンチはフェイントも含めて見事! 最高! めっちゃ好き! 社会派とシンプルな本格ミステリーが綺麗に合体しています。直接的な表現があるわけではないけど、吐き気をもよおす大人の悪意は他では味わえず、読みどころでもある。主要キャラもシリーズとして大きな節目を迎え、心が絞られるようだった。

地下道の少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

地下道の少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ジョーダン・ハーパー 拳銃使いの娘

獄中から発せられたボスの処刑命令は必ず執行される。刑務所を出たばかりのネイトは、11歳の娘ポリーを助けに向かった。すでに妻は殺されており、2人での逃亡と報復の旅が始まる。暴力と犯罪に塗れる中で、ポリーは生き延びるための術を身につけていく。

新聞だったか、書評欄をきっかけに読んでみた。ネイト・ポリー・刑事それぞれの視点がハードボイルドで、好みを言えば一人でもポップだったらよかったんだけど。体調も絶望的な時期に読んでいたので、もったいないことをしてしまった。

拳銃使いの娘 (ハヤカワ・ミステリ1939)

拳銃使いの娘 (ハヤカワ・ミステリ1939)

森博嗣 青白く輝く月を見たか? Did the Moon Shed a Pale Light?

北極基地の近く、海底5,000メートルで稼働し続けるスーパーコンピュータ「オーロラ」。忘れられた存在だったが、暴走の可能性を感じた政府は、ハギリに停止を依頼する。接触もできない、データを蓄積するだけのオーロラは何を見つめているのか。

森博嗣のWシリーズ全10巻、6巻は南極編。散々先鋭化した電脳と出会ってきたハギリだけど、また違うテイストでくるから森博嗣の深さハンパないな。変わりゆく世界を受け入れざるを得ない社会をダイナミックに書いていて、それはSFではなく、私が接しているものだと感じさせてくれる。