フェルディナント・フォン・シーラッハ 刑罰

ダイバースーツを着て、浴槽で死んだ男。赤ん坊を殺した夫の肩代わりで、刑務所に入った妻。実在の事件をモチーフに、裁きから漏れた罪を書く。罰を与えられれば、赦されたかもしれないのに。

『犯罪』『罪悪』のテイストが帰ってきた!削られたストーリーは今まで以上にパワーアップ!キャラクターも背景もほぼないのに、映像として浮かび上がる作風の凄さよ。どれもじんわりと余韻があって、嫌いな展開が1つもない。ほんの些細なすれ違いが、あの時の一言が、心に重石を残していく。シーラッハ未体験の人は『犯罪』だけでも読んでほしい。

刑罰

刑罰

NHK「女性の貧困」取材班 女性たちの貧困 “新たな連鎖”の衝撃

クローズアップ現代」「NHKスペシャル」で話題を呼んだ「女性たちの貧困」を書籍化。深刻化する10代、20代女性の貧困。奨学金が返せない女性、ネカフェで生活する姉妹、親の貧困を引き継いだ女の子……。フィクションではない、目の前にある苦しみを追う。

水商売、風俗産業といっても様々。深度こそ違うが、そこに片足を入れてしまうと抜け出せない人々。性産業特有の稼ぎ方をしてしまうと、一般の生活に戻れないエピソードは、多くの人が語るだけあって、本当に怖い。抜け出せないのであれば、自分だけで終えるしかないのか。しかし子どもにも引き継がれる連鎖が始まっている。家族、もしくは地域とは確実に繋がっていたいと教えてくれる1冊だ。

女性たちの貧困 “新たな連鎖”の衝撃 (幻冬舎単行本)

女性たちの貧困 “新たな連鎖”の衝撃 (幻冬舎単行本)

堤未果 社会の真実の見つけかた

9.11後のアメリカでいったい何が起きているのか?国民のためと進められた教育改革は、教育と学業を利用し、若者を丸裸にするためのビジネスではないか。あおり続けるメディアの実態を、取材を通して実感した著者が語る「情報を読む力」。

岩波ジュニア新書になっても堤未果節はまったく変わらず。というより、最後に「社会」への姿勢を書いてはいるけど、大筋は今まで読んできた「アメリカ」の話しだよね……。堤未果が未読なら、一度はどうぞ。

社会の真実の見つけかた (岩波ジュニア新書)

社会の真実の見つけかた (岩波ジュニア新書)