柴田治三郎 モーツアルト 運命と闘った永遠の天才

数々の伝説を残した天才音楽家モーツァルト。非凡な才能は確かだが、彼に干渉し続けた父親はよき教育者か、過干渉か。けっして明るくない生活の中で話題作を作曲しながら、宮廷・教会と上手く付き合えなかった。残された多くの手紙から35才の生涯を閉じた男の姿を追う。

ちくまプリマー新書から岡田暁生『よみがえる天才3 モーツァルト』が出版されたので、岩波ジュニア新書の本書と合わせて読んでみた。クラシック音楽界の巨匠というと芸術家のイメージがあるが、その実態は契約制の組合(ギルド)だった。現代日本の芸道もそうであることに気づかされる(彼らは芸術家でありながら、組織として振舞う)。彼らは映画の記憶もあって華やかなイメージがあったが、教育パパの影と、手紙に書かれたプライドの悲しさよ……。最初から終わりまで心臓が痛む本だった。

ウェルズ恵子 魂をゆさぶる歌に出会う アメリカ黒人文化のルーツへ

アメリカに渡ってきた黒人たちは宗教や労働、過酷な生活文化と交わることで、新たな音楽を生み出してきた。大地と先祖から受け継いだ魂をゆさぶる歌から、社会背景を読み、アメリカ黒人史を解説する。

マイケル・ジャクソンの登場がどれだけ世界文化に大きな影響を及ぼしたから始まる。ここがとにかく面白い。幼少期に見た「Thriller」の怖さ、メディアの内容が好きではなかったので避けていたけど、「Beat it」のMVを見て、そのテーマ・バックグラウンドを読んで感動した。マイケルのことをもっと知りたくなり、伝記的な本があれば読んでみたい。

戸田真琴 あなたの孤独は美しい

新興宗教の熱心な信者で、婚前交渉を厳しく禁じた母。家族を守りたいが故に厳しすぎた父。日々の不安と満たされなさに、居場所を探した先はAV女優だった。生きづらさとは何か、孤独とは何かを見つめる初エッセイ集。

ホモソーシャル論や映画評が面白かったので読んでみた。鴻上尚史が説く「生き辛さ」に、同性社会や性的役割を通して、彼女がどのように受け止めてきたかを書く。彼女に関わった友人たちのエピソードが多く、どう感じているのだろうか。グループでの立ち位置、自分の生きかたに悶々と悩んでいるひとにとっては処方箋のような本になるだろう。赤裸々であり、とても優しいエッセイで、気持ちが楽になった。

あなたの孤独は美しい

あなたの孤独は美しい