アンデシュ・ルースルンド ベリエ・ヘルストレム 三分間の空隙

子どもたちが200ドルを得て殺し屋になる市場がある、南米コロンビア。アメリカの麻薬取締局に雇われ、麻薬犯罪ゲリラPRCに潜入した男がいた。しかし米国下院議長が拉致されたことで、PRC幹部抹殺の命令が下る。リストに挙がってしまった男の運命は、グレーンス警部に託された……。

『三秒間の死角』からまさかの続編。第2の主人公と呼べる男が再登場し、ゲリラでの仕事はより残酷に、ミッションはより過酷になってしまった。シリーズ1番のボリューム感ながら、今まで以上のリーダビリティで物語は展開する。悪い表現をすればこれ「南米ゲリラに転生したら米国特殊部隊に殺されそうになった件」な俺TUEEE小説だった。しかも三秒間、三分間からさらに続く様子なので、楽しみでしかない。

我妻俊樹 忌印恐怖譚 くちけむり

実話怪談48話を収録。

様々な作家による共作・瞬殺怪談シリーズで知った我妻俊樹が、単独で新シリーズを立ち上げたので読んでみた。この人の語り口、ほどよく短い1話のボリューム感が好きなんだよね。紹介文の「待望の新シリーズ死導!」に笑ってしまった。

忌印恐怖譚 くちけむり

忌印恐怖譚 くちけむり

 

20年度読んでよかった本

2006年から続けてきた今年読んでよかった本シリーズ。目標の90冊には届かないまでも、75冊強まで達成できたし、感想も1冊残すのみなので満足だわ。しかし5月ごろ、漠然とした恐怖「俺はなんで何を読んでいるんだ?」に直面してしまった。このブログの外には毎日の新聞3紙と週刊月刊季刊の雑誌、電子書籍を含む数えきれないマンガと速読処理した書籍があるのか……。ともかく、今年は子どもが1人増えました。おめでとー! 元気よく育ってください。

今年のベストはそれぞれ絶対的な存在感を心に残してくれた3冊を挙げます。これだけ明確な年は稀かも。

よみがえる天才4 アレクサンドロス大王 (ちくまプリマー新書)赤毛のアン (文春文庫)特捜部Q―アサドの祈り― (ハヤカワ・ミステリ)

 父からマケドニアを譲り受け、インド北部までに及ぶ東方遠征を成し遂げたアレクサンドロス。帰路の途中、32歳で亡くなってしまった彼は、英雄譚や伝説になり消化されていく。その背景を克明に書いた澤田典子『よみがえる天才4 アレクサンドロス大王』。冷静な筆運びが見事は、ちくまプリマー新書「よみがえる天才」シリーズの中でも随一。

物語ならモンゴメリ赤毛のアン』。松本侑子の翻訳は、時代や信仰などの背景が増補されていて、現代北米が抱える問題点の源泉が見えてくる。養母となるマリラの視線が熱く、愛を含んだ言葉に涙を堪えきれなかった。

ミステリーからはシリーズ8作目、ファン待望、アサドの過去が明かされるユッシ・エーズラ・オールスン『特捜部Q アサドの祈り』に決まり! キプロスの浜辺に打ち上げられた老女の死体と、その隣に立つ男。そして「レベル2117」を目標にした殺人予告に、チームを分断して特捜部Qが挑む。アサド! アサド! アサド! 君ってやつは! 特捜部Qと2人の凶悪犯によるコンゲーム! とにかく熱い! 大満足の節目だった……。読み終えたとき、物語と共鳴しすぎて心臓が痛かったことが忘れられない。

昨年からの課題だった小川一水『天冥の標』シリーズを3月末に読み終えたのはタイムリーというか、希望をもらったというか。続いて小野不由美ゴーストハント』シリーズ全7巻も! とりあえず格好いいから表紙並べておきますねー。シリーズものは面白さと達成感が、エネルギーと時間につり合ってない?(そう思って読むもんではない)

天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ(上)天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ(下)天冥の標Ⅱ 救世群天冥の標Ⅲ アウレーリア一統天冥の標Ⅳ 機械じかけの子息たち天冥の標Ⅴ 羊と猿と百掬の銀河

天冥の標Ⅵ 宿怨 PART1天冥の標Ⅵ 宿怨 PART2天冥の標 6 宿怨 PART3 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標Ⅶ 新世界ハーブC天冥の標VIII ジャイアント・アークPART1 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標Ⅷ ジャイアント・アーク PART2

天冥の標Ⅸ ヒトであるヒトとないヒトと PART1 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標IX PART2 ヒトであるヒトとないヒトと(ハヤカワ文庫JA)天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART1 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標Ⅹ 青葉よ、豊かなれ PART2 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART3 (ハヤカワ文庫JA)

ゴーストハント (1) 旧校舎怪談 (幽BOOKS)ゴーストハント (2) 人形の檻 (幽BOOKS)ゴーストハント (3) 乙女ノ祈リ (幽BOOKS)ゴーストハント (4) 死霊遊戯 (幽BOOKS)

ゴーストハント (5) 鮮血の迷宮 (幽BOOKS)ゴーストハント (6) 海からくるもの (幽BOOKS)ゴーストハント (7) 扉を開けて (幽BOOKS)

おまけでマンガを紹介すると、ベストは在間りしん『怪物少女は初恋の夢を見るか?』全3巻。天才少女と凡人幼馴染がくり広げるラブコメで、派手さはないほのぼの系だけど、文化祭で迎える物語のピークを体験してほしい。小山ゆうじろう・イーピャオ『とんかつDJアゲ太郎』全11巻は連載から大好きで、ジャンプ+の再連載もずっと読んでいたけど、今回単行本で再読。仕事への哲学に共感しかなく、どん臭い姿や仲間に囲まれて成長していく様子に元気がもらえる。あとめっちゃトンカツ食べる率上がった。

怪物少女は初恋の夢を見るか? 1 (ジャンプコミックス)怪物少女は初恋の夢を見るか? 2 (ジャンプコミックス)怪物少女は初恋の夢を見るか? 3 (ジャンプコミックスDIGITAL)

とんかつDJアゲ太郎 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)とんかつDJアゲ太郎 2 (ジャンプコミックスDIGITAL)とんかつDJアゲ太郎 3 (ジャンプコミックスDIGITAL)とんかつDJアゲ太郎 4 (ジャンプコミックスDIGITAL)とんかつDJアゲ太郎 5 (ジャンプコミックスDIGITAL)とんかつDJアゲ太郎 6 (ジャンプコミックスDIGITAL)とんかつDJアゲ太郎 7 (ジャンプコミックスDIGITAL)とんかつDJアゲ太郎 8 (ジャンプコミックスDIGITAL)とんかつDJアゲ太郎 9 (ジャンプコミックスDIGITAL)とんかつDJアゲ太郎 10 (ジャンプコミックスDIGITAL)とんかつDJアゲ太郎 11 (ジャンプコミックスDIGITAL)

まずは読んで記録していくしかないなーと思った1年でした。2021年も面白い本と出会えることを楽しみにしています。