2008-01-16から1日間の記事一覧

竹本健治 闇のなかの赤い馬

初・竹本健治になる『闇のなかの赤い馬』。トリックのための殺され方を酷だと思ったのは、M・スレイド以来かな。こんなので死にたくねえ。序盤でネタの大部分は分かってしまうものの、処理の上手さを堪能できる。少年学園ものとトリックを演出するイラストは…

岸田るり子 出口のない部屋

岸田るり子『出口のない部屋』は、実に歪な押し寿司型ミステリ。まさかミステリになるとは! な驚きは一入だが、そこに感じる無理加減は笑いさえ生じる(かも?)。小説家が”部屋に閉じ込められた3人”を書いた原稿……云々で、メタ・ミステリを連想させて遠慮…

ジョージ・R・R・マーティン 王狼たちの戦旗 〈下〉 ― 氷と炎の歌 〈2〉

さらに世界が動き出すジョージ・R・R・マーティン『王狼たちの戦旗 〈下〉 ― 氷と炎の歌 〈2〉』。季節が不定期に夏と冬を繰り返す”七王国”の波乱は収まることなく、王位継承問題はクライマックスへ。坊城戦が素晴らしく、記憶に残る名シーン。弱者による外…

加藤実秋 インディゴの夜

んんん? 受賞云々というよりミステリ・フロンティアで出してほしくはなかった加藤実秋『インディゴの夜』。とにかく文章が軽いので(僕は苦手)読みやすい、というよりは流せる文章。全4編収録して、受賞作と最後の1編のネタがミステリとして優れているとは…

恩田陸 エンド・ゲーム ― 常野物語

シリーズ3作目の恩田陸『エンド・ゲーム ― 常野物語』。結末のフニャフニャ感は恩田陸にとっての物語理想系だと解釈すれば、なんとか納得できるようになった。物語舞台に引きずり込む力はやはり圧倒的で、それだけで読む楽しみを満足できちゃう。エンド・ゲ…

松岡圭祐 マジシャン

目の前にある金が、手も触れずに倍になる。それはマジックか、それとも詐欺なのか。松岡圭祐『マジシャン』は、小ネタの連続で飽きることなく読ませて、最後は大きなしかけで驚かす。ミステリとしてもサスペンスとしても申し分なく、単純な構成が上手く光っ…

木原浩勝 新耳袋 ― 現代百物語 〈 第8夜 〉

毎夏恒例木原浩勝『新耳袋 ― 現代百物語 〈 第8夜 〉』。寝しなに数話を読むのが大変楽しい現代怪談99話を収録。どの巻から読んでもいいけれど、シリーズ中の最高傑作「山の牧場」を収録した『第4夜』だけは別格。この恐さだけはわすれられないので、残して…

石田衣良 アキハバラ@DEEP

弱者たちの子どもが大企業に盗まれた。全てをかけた傑作サーチエンジン「クルーク」を悪の手からとり戻せ! 石田衣良『アキハバラ@DEEP』の面白さは常に壁があらわれること。それを楽しそうにクリアしていく、買い物から始まった冒険はいつの間にか世界を救…

ガチャフォース 6週目終了

久しぶりに『ガチャフォース』再熱! 総ロボット数200体以上! 連ジ・バーチャロンのシステムにコンボ要素も。合体ロボットから特撮ヒーローまでが出そろう闇鍋ゲーム! 6週目からスタートした上で久しぶりにプレイすると、敵の(クリア毎にレベルが若干上昇…

田中芳樹 ラインの虜囚

田中芳樹だからこそか、直感的に面白さがわかる『ラインの虜囚』。章タイトルは某ミステリを彷彿とさせ、冒険の終わりに待っている単純な騙しもいい。少女1人と怪しい男たち3人の冒険が終わってこそ、そういうことだったのか! と楽しませる「その後」に魅力…

西澤保彦 いつか、ふたりは二匹

少年だからこそ抱く複雑な心境が生々しい西澤保彦『いつか、ふたりは二匹』。主人公と読者が同じ絶望を感じるんだけど、そのプロットが凄く上手い。これを読んで西澤作品への印象がガラッと変わって(好きじゃないんです)、このアプローチが快感になるのか…

須賀しのぶ 喪の女王 (4)

民から愛され、貴族から恐れられた須賀しのぶ『喪の女王 (4)』。最終章というより女王バンディーカ編にしてくれたらいいのにブツブツ。第一線にいる女王の華麗にして残酷な人生の顛末が書かれた4巻は、とにかく悲して残酷。愛しても愛しても……『風よ、雪よ。…

きづきあきら ヨイコノミライ 復刊版1,2巻

出版社の倒産で未完結・絶版になっていたきづきあきら『ヨイコノミライ』が、最後まで書下ろして全4巻予定でついに復刊。 メルヘンやリストカッターなどのサイコちゃん寄りから、声優希望、売れっ子同人兄弟、創作批評でイケテル! と思っている嫌われものな…

松岡圭祐 催眠 ― Hypnosis

自称宇宙人。考えていることを当て、ジャンケンに負けない女。彼女の秘密を暴く松岡圭祐『催眠 ― Hypnosis』。序盤のサスペンスから、最後はちゃんとミステリになっているのが上手い。かったるい催眠の説明もパチンコ依存症と合わせて読ませるなどのアプロー…

東野圭吾 赤い指

家族の罪を隠そうとする2日間を書いた、加賀恭一郎が登場する極上サスペンス東野圭吾『赤い指』。前作『容疑者Xの献身』が愛のための犯罪なら、こちらの内容も同じく隠そうとするが、家族憎悪うずまく犯罪。実に気持ち悪く、不愉快になれるので読んでいて楽…

道尾秀介 背の眼

写真に写った眼。心霊写真が原因で4人も自殺したのか。天狗による幼児誘拐事件が起こる村に小説家・道尾とその友人・真備が真相を明かしに行く道尾秀介『背の眼』。少しのホラーと骨太の本格。余談オチが多すぎて、もっと中心部に繋がってくれたらよかったの…

浦賀和宏 八木剛士史上最大の事件

恋の妄想は加速し続け、ついに脳外に! 松浦純菜シリーズ第4弾浦賀和宏『八木剛士史上最大の事件』。書こうとしてることって現代版『アシュラ』だったんだ! まさに「生まれてこなければよかった」の連続。だけど唯一の救い、純菜のことを思いうときだけは誰…

ジョージ・R・R・マーティン 七王国の玉座〈2〉―氷と炎の歌〈1〉

再読になるジョージ・R・R・マーティン『七王国の玉座〈2〉―氷と炎の歌〈1〉』。ようやく事件の全貌と主要な問題が見えてくるけど、それは物語にとって引き金でしかない。歌と恋を愛する少女サンサがどうなっていくかを思い出すだけでドキドキしますね。七王…

フレデリック・ポール編 ギャラクシー 下

1958〜69年まで米国SF雑誌『ギャラクシー』2代目編集長を務め、SF作家でもあったフレデリック・ポール。創刊30周年を記念して、彼が選ぶ64〜76年の傑作選『ギャラクシー 下』。それぞれの作品に作家紹介と、作家本人による作品および『ギャラクシー』への覚…

デニス・ルヘイン シャッター・アイランド

孤島! 密室! 暗号! と本格のドンパチで薦めるより、読みやすい海外作品として挙げたいデニス・ルヘイン『シャッター・アイランド』。『孤島』とか『閉ざされた島』というタイトルで出た新本格っぽいトリックに、駆け引きなどが楽しい上質のサスペンス。会…

松岡圭祐 千里眼

メインは美貌ヒロインvs宗教テロなんだけど、『意外な真相』が凄い松岡圭祐『千里眼』。キャラクタ造形の完璧っぷりといい、都心へのミサイル攻撃は遊び程度でしかないスケールといい、ミステリ界の車田正美かおまえは。教皇が双子座のサガだったぐらいの驚…