小野不由美 東の海神 西の滄海 十二国記 3

雁国に新王が即位して20年。延王・尚隆と延麒・六太が誓約を交わしてから、先王の圧政で荒廃した国土は平穏を取り戻しつつあった。しかし道半ばには達していなかった。延王に異を唱える者たちが、延麒を誘拐し謀反を起こそうとしていた。国の安泰と玉座を賭…

佐々涼子 エンド・オブ・ライフ

京都で在宅医療を取り組む医療従事者たちを取材し、患者の終末期と家族を寄り添うように見てきた著者。友人の看護師が末期がんになり、自身の最後へと向き合うときがきた。著者と難病の母、献身的に介護する父。終末医療の一角を記録する。 2020年本屋大賞ノ…

黒木あるじ 怪談四十九夜 鎮魂

新しいアルバイト先に来たお客さんが。学校の先生の一言が。旅先で見たテレビ番組に映ったあれは……。気づいてしまうと、今までの日常には戻れないのかもしれない。現代実話怪談の作家たちによる49話。 祖父宅で食卓に出た「赤いゼリー」(真白圭)。工作で作…

阿賀沢紅茶 西馬舜人 正反対な君と僕 サニー&レイニー

少年ジャンプ+で大人気連載中の等身大ラブコメが初の小説化。いつものように元気に投稿した鈴木だったが、谷くんの様子がいつもと違う? 山田に好きな本を貸した西さんは感想が気になって……。少し違う日常を3組の視点で書く連作短編集。 私が知っているラブ…

高野秀行 【カラー版】ミャンマーの柳生一族

探検部の先輩、舩戸与一に誘われた取材旅行先はミャンマーだった。監視役の案内人たちから見えてきたのは、ミャンマーの軍事政権は武家社会? 幕府が送り込んだ柳生一族と南蛮人の死闘が始まる……。 近著が話題になっていたのでハイハイとんでも伝奇と思って…

吉田千亜 原発事故、ひとりひとりの記憶 3.11から今に続くこと

2011年3月11日、東日本大震災を起点に原発事故が発生。10年少しが経った今でも、福島に残った人、福島から出た人へ、著者は取材を重ねていた。あの瞬間が分岐点となった18人の道のりを伝える。 著者の「孤塁 双葉郡消防士たちの3・11」は、震災・原発事故に…

中田永一 彼女が生きてる世界線 3 失われた生存ルートを求めて

サラリーマンの僕が転生したのは、大好きなアニメ「きみある」の世界。悪役令息・城ヶ崎アクトに転生した僕は、最終回で死ぬヒロインのために全力を尽くす。残された写真から、シナリオに書かれなかった伏線に気づいたアクト。皆んなの力と全ての権限を使っ…

梨 かわいそ笑

ネットで出会った友人の一室で。ネット掲示板に貼られたQRコードから。インタビューの書き起こしデータ。出典不明の心霊写真。また届いた匿名のメール。「死んだ人のことはちゃんと可哀想にしてあげなきゃ駄目でしょう。」 朝日新聞で新鋭モキュメンタリーと…

中田永一 彼女が生きてる世界線 2 変わっていく原作

サラリーマンの僕が転生したのは、大好きなアニメ「きみある」の世界。悪役令息・城ヶ崎アクトに転生した僕は、最終回で死ぬヒロインのために全力を尽くす。だけど、シナリオはおかしな方向に動いていく。どうして主人公の蓮太郎は彼女と出会わない……? 中田…

中田永一 彼女が生きてる世界線 1 僕が悪役に転生!?

サラリーマンの僕が転生したのは、大好きなアニメ「きみある」の世界。しかも誰もが恐れる“悪魔”城ヶ崎アクトになってしまった。最後はヒロインの葉山ハルの病死が決まっているが、もしかして救えるのか!? アニメを知りつくした僕なら変えられるはず! 中…

氷室冴子 ざ・ちぇんじ! 新釈とりかえばや物語

時は平安後期。権大納言の藤原顕通は2人の子どもに恵まれた。しかし、男勝りで活発な姉は男の子として、内気で気絶癖のある弟は女の子として育ってしまった。15才になった綺羅姫は元服し宮中で仕えることに。帝が気にする女性は、家で泣いている弟の綺羅君!…

石崎洋司 阿倍野ちゃこ JC紫式部 1 転校先は、”姫”ばかり!?

アメリカから京都に転向してきた中1の一ノ瀬彩羽は、イケメン高校生の藤原道長さんに助けられた。注目を浴びてしまい、おとなしく過ごそうと思った学園生活は大ピンチ! お世話役の藤原紫さんは面倒見はいいけど、強気でマイペース。クラスの中心人物、清原…

遅塚忠躬 フランス革命 歴史における劇薬

「自由・平等・友愛」を合言葉に,歴史に大きな転換をもたらしたフランス革命とはなんだったのか。しかしそれは社会構造を変える薬であり、多くの死者を出した劇薬でもあった。当時の資料から人びとの苦悩と、革命そのものの意味を考える。 歴史の出来事には…

小野不由美 風の海 迷宮の岸 十二国記2

戴国麒麟として生まれるべき泰麒は、突然の蝕で蓬莱に流され、人の子として育った。10年後、無事に戻った泰麒だったがその役割と命を理解できなかった。しかし「王」の名乗りを挙げたものたちが集まり、麒麟としての葛藤は増す。 王になる名作は数々あれど、…

鈴木棒 実話怪談 花筐

公募実話怪談大会「怪談マンスリーコンテスト」で注目を浴びた現代怪談の聞き手、鈴木棒のデビュー作。集めた奇妙な体験談37話を収録。 自費電子出版をした「エニグマを集めて」がよかったので、デビュー作から読んでみた。廃墟マンションに残された仏壇で見…

小野不由美 月の影 影の海 十二国記1

「お捜し申し上げました」。陽子の前に現れた、ケイキと名乗る男は深く跪いた。その先にたどり着いたのは異界の浜辺。故郷へ帰るため、母に会うために陽子は人に騙され、異形の獣に襲われ、旅をして生きる。十二国記シリーズ第1作。 再読するのも20年ぶり。…

井上真儀 聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた

聖女伝説が伝わる里で行われた伝統的な婚礼儀式。同じ杯を飲み回した出席者から、生者と死者が交互に出る“飛び石殺人”が発生した。これは聖女による奇蹟か、それとも意図した殺人か。探偵・上苙丞による「奇蹟の実在」証明が始まる。 推理合戦が始まると思い…

中山市朗 怪談狩り 葬儀猫

「新耳袋」の著者・中山市朗が蒐集した実話怪談シリーズ第9弾。八甲田山にまつわる怪異の数々。それは土地を越え、話者にもおよぶ……。 角川ホラー文庫で唯一読んでいる実話怪談集。「山の集団」「神隠し」が山ネタだけでない奇妙な共通点があり、じわりと寒…

渡辺祐真・編 みんなで読む源氏物語

源氏物語は楽しい! 国文学者や日本語学者、歌人に能楽師・芸人・物理学者・翻訳家たちはなぜ挫折し、どう再起して読んだのか。 源氏物語は読んでいなくても、源氏物語概論は読めば読むほど面白くなる。書評家・渡辺祐真による恐ろしいほどざっくりしたあら…

キャサリン・R・ハワード ナッシング・マン

かつてレイプや殺人をくり返した連続殺人犯「ナッシング・マン」。今は警備員として慎ましやかな生活に満足をしていた。しかし書店で販売された本を見て状況は一変する。被害者家族のなかで唯一生き残った少女が、真相を追う本を出版しのだ。 ナッシング・マ…

吉村昭 破獄

昭和11年青森刑務所脱獄。昭和17年秋田刑務所脱獄。昭和19年網走刑務所脱獄。昭和22年札幌刑務所脱獄。4度の脱獄を実行した無期刑囚佐久間清太郎と刑務官の物語。 戦中・戦後を舞台にした刑務所・公務員小説。食料はないわ戦争で人はいないわ、とにかく厳し…

津村記久子 苦手から始める作文教室

作文を書くにはどうしたらいいのだろう。なにを書く。どう書く。芥川賞受賞作家が若いひとに伝える実践方法とは。 作文を書くには、というより「書き始めるには」を優しく教えてくれる。メモを取りながらの読書を提案しているが、私は写真で記録しているのと…

青崎有吾 地雷グリコ

文化祭の場所取りを賭けて始まったのは、罠の位置を読みあって階段を登るグリコだった。百人一首を使った神経衰弱や、オリジナルの一手を追加するジャンケン。平穏な学生生活を望む女子高生たちが巻き込まれる奇妙なゲームの数々。 女子高生勝負師・射守矢真…

葉真中顕 そして、海の泡になる

バブル絶頂期の大波が引くなか、個人史上最高額4,300億円の負債を抱えて自己破産いた朝比奈ハル。平成が終わる年、彼女は獄中で静かに死んだ。彼女の半生を小説に書こうと決めた私は、ハルの縁者に聞き取りを始める……。 葉真中顕が書く“時代に溺れた主人公”…

山本草介 一八〇秒の熱量

37歳までに日本チャンピオンにならなければ強制引退を控えたボクサー・米澤重隆を、NHKドキュメンタリー作成班が追う。残された9ヶ月で、スピードもテクニックもスター性もない彼は、自身との激闘が始まる。 熱いノンフィクションだとX(Twitter)で見かけて…

米澤穂信 可燃物

群馬県警の葛警部は、上司からも部下からも好かれてはいなかったが、誰もが彼は優秀だと知っていた。スキー場の遭難現場で起こった殺人事件では凶器が見つからなかった。山中で見つかったバラバラ死体を巡る顛末。連続放火事件がぴたりと止まってしまい、犯…

西崎文子 武内進 編著 紛争・対立・暴力 世界の地域から考える

世界各地で深刻化する紛争や対立、暴力。その原因である宗教、人種・民族、貧困格差を、各地域の専門家が解説し、今後の展望を探る。 「亀裂」を軸に、世界各地で起こっている事例を各地域の専門家が解説する。麻薬カルテルによる南米の暴力と支配構造も興味…

23年度読んでよかった本

2006年から続けている「今年読んでよかった本」。ストレスがあるなら衝突すれば解決するじゃない? という恐ろしい1年でした。皆んなよくがんばったよ。2024年は少しでも落ち着いてくれれば。この1年での読書記録は85冊以上。ふり返ると印象に残った作品が多…

高野和明 踏切の幽霊

東京・下北沢の踏切で撮影された心霊写真。そこでは列車の非常停止が多発していた。雑誌記者の松田は、心霊特集のために取材に乗り出すが、近くで起こった殺人事件を知る。その被害者の身元は今でもわかっていなかった……。 ゲームクリエイターの小島秀夫がベ…

黒木あるじ ほか 投稿 瞬殺怪談

怪談の名手によって紡がれる、一瞬で読める実話怪談アンソロジー。作家8名と応募作から厳選した29名による全147話を収録。 実話怪談シリーズの中でもっとも好きな「瞬殺怪談」。書き手それぞれ魅力的で、シリーズ1の出来かも。中でも田辺青蛙の呪物ネタが強…