山田風太郎 忍法創世記

1390年、時代は南北朝が両立してから55年が経った室町中期。忌み嫌い合っていた柳生と伊賀の両里は、和解を試みて両家の息子たち、娘たちを結婚させようとしていたその時、それぞれの里にやってきた朝廷からの使者たち。柳生に言うには「三種の神器を破壊してでも、北朝の手に渡すな」と剣豪が。伊賀に言うには「三種の神器を死守し、北朝の手に渡せ」と忍者が。それぞれが折り合おうとしていた期待を捨てて、神器をかけた一大争奪戦が始まろうとしていた。

や、やーっ、ヤマアーッ!! フウーッ!! 素ん晴らしい。本当に面白い。もうヤバい。短編で読んだ婚前試合から始まったと思いきや、甲賀忍法帖の多勢バトルロワイヤルに、内部闘争を書いた忍法忠臣蔵、それにくノ一忍法帖かよ! かよ! なのかよ!? しかも可愛い。ヒロインたちが怒った顔もどうしようもなく可愛い。そしてそして、どこまでも果てしなくエロ−−−−−−−−い。(0w0)<ドゴマディモエルロインディスカー!?

失礼。興奮しすぎました。二夜温世界の二夜温さんから頂戴しました。ありがとう御座います。「忍法帖シリーズ唯一の未刊行作品」だけあって、それなりの出せなかった理由(日下三蔵による解説が詳しい。しかも超面白い。そしてミステリー系サイトに触れているのに少し笑った)があるのは分かるのですが、いやもう、世に出なければいけない面白さですよ。昭和44年〜昭和45年に週刊文春での連載だったので、得体の知れぬ面白くなさを想像していたのですが、いやいやあ、裏切られた以上の構成力に脱帽。申し訳なかったと天国の山田風太郎に謝りたいから死にたい。死んで謝罪したい。

表紙が山田風太郎が煙草を持っている1面でドーン。格好良い。勉強机に立てかけて、椅子に座りながら見つめて、足をブラブラさせる乙女みたいにしてみたい(ということで、ちょっと試したのだが余りにも恥ずかしくて止めた)。背表紙も幅一杯に「山田風太郎」って。山口雅也などを担当した京極夏彦の装丁は基本的に好きではなかったのですが、これだけはもうLOVEっていうの(テヘッ)? 貫禄ありすぎです。

個人的に苦手とする室町物ながら、柳生と伊賀がどうして剣術と忍法に特化していったかの過程で猛烈に読ませる。当然の如く決闘シーンが差し込まれ、そして複雑化するだけの組織構造。愛しているが敵ゆえ会えない辛さ。ぼんやりと霧中と化していく目的。「どうして僕たち(私たち)は戦わなければいけないんだ!?」というテーマもご馳走様でした。昭和時代にこれだけの構想を書いてしまって、どうして僕は今更読んでいるんだ。タイムスリップして同時代で読みたい。本気でそう思う。

もう僕が馬鹿書いても面白さは伝わらないので、読んで下さい。ハードカバー・2段組の300ページほどとボリュームとして多いかもしれませんが、いやもう止めヤメ。読んで。読め。読んで下さいお願いしますよ。このとおりですよ。山田夫人である山田啓子「あとがきにかえて」が泣けるんですよ。

まだまだ山風本が残っている。1冊読めば、ただ1冊だけ減る。次に何を読もうかと考えるのが楽しい。せがわまさきによる「柳生忍法帖」の漫画化「Y十M」も決まったのですが、これは連載を少しだけ読んでから手にしようと思っているし、それを記念して中期良作といわれる「忍びの卍」にするか、短編は就寝の楽しみにしておきたいし、久しぶりにミステリー傑作選も良いし、続けて室町物の「室町お伽草子」にするか、それとも……、明治物なんて1冊も手にしていないんだよなあ。(0w0)<ウレジグルジー!!