ロバート・A・ハインライン ラモックス - スタービースト

スチュアート家に100年以上暮らすペットは、ばかでかい宇宙怪獣だった。その名はラモックス。飼い主のジョン・トマスが留守をしている間に、ラモックスが外の世界につまみ食いに出かけたことから、町は大パニックになってしまう。見た目は可愛くても、どんなものでも口にしてしまうラモックスと、大学に入学する直前のジョン・トマスが起こしていく騒動とは……。

ラモックス―ザ・スタービースト (創元SF文庫 (618-8))

ラモックス―ザ・スタービースト (創元SF文庫 (618-8))

「アメリカにはライトノベル・レーベルというのは存在しないのですか?」というねとらじでの質問から、「これなんてそうなるかな」と薦めてもらったのがR・A・ハインライン「ラモックス」です。名無しさん、ありがとう御座いました。ライトノベルというよりはジュブナイルSFでしょうか。名無しさんもそれを思いながら書いてくれたとは思うのですが、ジュブナイルSFに当てはまらないライトノベルという存在は面白いですね。

予想していた物語は、ラモックスとジョン・トマスが町で暴れたり、色々と食べたりしてお腹を壊したり、オマケ程度に少女と恋をしてしまうようなものだったのですが、そうはいかない。そんな子供が読んで面白いような物語ではない。子供が読んでも面白いし、大人が読んでもかなり面白い傑作です。初ハインラインだったのですが、好印象どころか、続けて読みたくなりますね。

大森望・訳者解説に書いてあったのですが、カーティス・スミス編「20世紀SF作家辞典」のハインラインの項目で本書と取り上げ、「はじめてのSFとの出会いにもっともふさわしい一冊」と評しているのが格好良い。こうしてSF読みになっていく人がいるのかと思える内容も、交流なんてものを書くためにスケールと進め方が意表を突いていて、ジョン・トマスのキャラクタがサブに食べられながらも、やっぱりジョンが登場するとドキドキするんですよね。下手をすればラモックスなんて必要なくなるのじゃないかと思わせながら、やっぱりラモックスの魅力が最大です。

R・A・ハインライン夏への扉」「月は無慈悲な夜の女王」は物語に関する詳細な評価を目にしていないので、楽しみでしょうがない。それにハインラインはシリアスなSF作家だという印象があったので、このような「ラモックス」というちょっと笑えて、ほんの少し泣けて、かなりドキドキワクワクする物語を書ける人だと分かって良かった。次は「夏への扉」にしましょうか。そうしましょう。