綾守竜樹 くノ一夜伽話 ― この印篭が目に入らぬか?

全編レズものですが、綾守竜樹の粘着力高い文体を生かした『くノ一夜伽話 ― この印篭が目に入らぬか?』が良作。亡き母の形見から、私を守ってくれる三人のくノ一が登場。世間ズレした生活もなんのその、毎夜の奉仕に戸惑う私だったけど……。母の死から合理的に生きることを目指した主人公の秘めた心。くノ一の厳しい修行を強いられた薊の生き様。それが溶け合わさっていくビルドゥングスロマンとしても面白いし、女の子同士だから得られる貪欲な描写は素晴らしい。ハードなシチュエーションはないけど、どうすれば盛り上がるかを考え抜かれた一作です。実はこの作者、山田風太郎が好きだそうで、前に二次元ドリームノベルズで『くノ一淫闘帖』を書いており、本書は遠い続編になります。