藤崎慎吾 クリスタルサイレンス

藤崎慎吾『クリスタルサイレンス』(上巻)(下巻)は、西暦2071年の火星北極冠で見つかった高等生物の死骸を巡る物語。火星の水源を書いた社会性は一気通読の面白さで、その裏で暗躍するブラック・マーケットと絡めた物語性は最高。それだけにホーガン『星を継ぐもの』を期待して読むと、何故か恋愛版「攻殻機動隊」でガックシ。僕が求めていたガツン! と振り下ろされるべき鉄槌は変な部分を直撃してくれましたが、本書によって得たスペクタクル分でお腹はいっぱい。あー、でも謎が解ける快感が欲しい。信じられないぐらいイライラしています。だって火星の巨大な氷から高等生物が発見されて、生命考古学者が登場するとなれば行き詰って、しかし新たな発見によって新説を築き、でも覆され……ねぇ?

クリスタルサイレンス〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

クリスタルサイレンス〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

クリスタルサイレンス〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)

クリスタルサイレンス〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)