マークース・ズーサック 本泥棒

アンネの日記』+『スローターハウス5』と評されたマークース・ズーサック『本泥棒』が、いやいや素晴らしかったですよ。ナチスが力を伸ばしていくドイツ下で、死神が語る少女リーゼルの青春。本を盗むことによって勇気を得て、人に出会い、成長し、別れていく……。そんな少女の姿に心打たれないやつは本好きじゃねえよと。そう聞こえてくるようで、いやらしい作者だ。しかし、このキャラクタたちと設定は泣かせにかかってくるな、と思わせてそうじゃない。そうじゃないけど、じわりじわりとくる感情の隆起がたまらんなあ。大人向けに翻訳されている少年少女が主人公の作品は、良作が多いのかしら。今年のベストはこれでいいです。

本泥棒

本泥棒