鏡明 不確定世界の探偵物語

また珍しいものを読んだ気になる鏡明『不確定世界の探偵物語』。読書中のSF的気持ちよさはあとがき・解説でやっとわかった。大富豪が所有するタイムマシンによって小さな変化が訪れる世界のハードボイルド。私立探偵ノーマンへ依頼される事件が独特になっているので、実にキャッチーな連作短編小説として読める。死んだはずの依頼者が、どうして依頼していたのかと訪れてくる「復讐の女神」。両親が偽者だと信じる「少年の冒険」。尾行依頼の男が目の前でアザー・タイマーと化す「暗闇の女」。少しずつタイムマシンの謎へと近づき、ラスト1編が残す余韻はミステリ・ファンも満足できるのでは。

不確定世界の探偵物語 (創元SF文庫)

不確定世界の探偵物語 (創元SF文庫)