遣唐使として長安に入った沙門・空海と、友人の書家・橘逸勢。彼らの見るものは新しく、百万人都市に魅了される。しかし帝が死ぬと予言する鬼たちが現れ、知らぬうちに巻き込まれていく空海たちであったが……。夢枕獏『沙門空海唐の国にて鬼と宴す 全4巻』は、連載誌を何度もかえることになって執筆17年。そのため幾度となく同じ説明を目にすることはあったが、それさえ忘れれば、長さを感じさせないエンタテイメントだった。空海が宇宙を感じていく描写なんかは震えるほど素晴らしく、タイトルままのシーンへ入る前後はもう……どういえばいいのかわからないけど、見えてくる? 聞こえてくる? みたいな臨場感だけは再び得がたい体験だったと思う。この文体だったからこそ、そこまで没入させてくれる物語を読めて、本当幸せでした。
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