スティーヴン・グールド ジャンパー

ある事件から、自分はどんな距離をも瞬時に飛べてしまう”ジャンパー”だと気づいたデイヴィッド。彼は冴えない少年だったが、アル中の親父から逃げて単身ニューヨークで暮らすことにする。そこに待っていたのは金銭トラブルと、静かな読書空間と、初めてのガールフレンドだった……。
映画の予告を見てウヒョー面白そう! と思って、スティーヴン・グールド『ジャンパー』読んでみたら、まったく違うので笑った。いい具合にだまされていたので問題はない。全編通して世界中を飛び回るような印象を持ちがちだが、前半の中心になるのはおくてな遠距離恋愛だ。彼女に言うか言うまいかで悩む葛藤が、実に気持ちよく読めるのはアメリカ小説らしい良さ。大雑把なところはあるが、テンポよく進んでくれる物語を前にそこまで言及する必要もないだろう。少年少女向けと表現するより、どことなく懐かしい匂いがする良作だ。

ジャンパー 上 (ハヤカワ文庫SF ク 8-5)

ジャンパー 上 (ハヤカワ文庫SF ク 8-5)

ジャンパー 下 (ハヤカワ文庫 SF ク 8-6)

ジャンパー 下 (ハヤカワ文庫 SF ク 8-6)