貴志祐介 新世界より

1000年後の日本。わたしたちは、大人になるために”呪力”を手にしなければならなかった。クラスメイトたちが一人、また一人と大人になっていく中、わたしは遅々として力が現れず・・・・・・。誰もが毎日を満足していたはずなのに、”図書館”を手にしたことによって、完全に管理されていた日常が壊れだす。
なんという痛々しく古臭い設定! しかし誰も拾わなくなった石ころを、貴志祐介が集めれば、こんなにも輝かしい永遠に続くようなアクセサリーができるとは・・・・・・。ほぼとって付けたようななキャラクタたちばかりだが、話しが進むにつれ、あやふやになる世界と相まって、どんどん魅力を増していく。以前に講演会で山田風太郎への言及があったが、思い出さずにはいられない。
表面をなぞるだけでは、一気に読める傑作エンタテイメント小説だ。しかし、1000年間にあった語られない空白の歴史が存在し、そこを想像し始めると、とんでもないホラー小説になる。作中ではなんとも軽く触れられているが、元祖”女王”がなんだったのか、どうしてそうなったかを考え始まると、あまりに恐ろしく、震えが止まらない。
上下巻合計1000ページもある超大作だが、貴志祐介はそこまで圧縮することによって、まだまだ膨らみをもつ世界観そのものを世に出したとも言いたい。

新世界より (上)

新世界より (上)

新世界より (下)

新世界より (下)