北森鴻 凶笑面 ― 蓮丈那智フィールドファイル〈1〉

美人民俗学者・蓮丈那智と助手の内藤が興味を示し調査にでると、殺人事件に巻き込まれてしまう連作短編集。歴史ミステリの話題になっても、本作がでることって不思議となかったんだよなあ、と思ってしまう納得の内容と出来。
聖徳太子はイエス・キリストだった」という飽きあきしたテーマの「邪宗仏」が収録作でベスト。隠れキリシタンと両手のない観音菩薩を使い、見立て殺人と共に、なるほどそんな使いかたと答えがあったかと、本当に歓心させられる。
死者を呼ぶとされる仮面をめぐる表題作や、穢れとされた女性を閉じ込めておく「不帰屋」で起こった密室殺人なども収録。本格ミステリと呼ばれる要素と、伝承されてきた土地の要素が上手いこと絡み合っている。なので歴史ミステリに対してよく聞く「ミステリいらねえ!」という言葉がでてこない。

凶笑面―蓮丈那智フィールドファイル〈1〉 (新潮文庫)

凶笑面―蓮丈那智フィールドファイル〈1〉 (新潮文庫)