安楽椅子犯人 - 湖岸の盲点 -

7月28日に公開となるフリー・ゲーム、サウンドノベル『安楽椅子犯人 - 湖岸の盲点 - 小此木鶯太郎の事件簿 問題編』をプレイ。これは倒叙形式(犯人視点のミステリ)であり、しかしプレイヤーの目的は、犯人が犯した4つのミスを暴くというものになる。解答編は8月13日に公開予定。解答を募集しており、正解者13名には総計10万円相当の賞品が送られる。中身は一見してオーソドックスだが、さて解答を考えるとなると手ごたえ軽いものではない。


スクリプト担当のgMA氏(id:gma)からの紹介を受け、プレイした感想。


7月28日に公開となるサウンドノベル安楽椅子犯人 - 湖岸の盲点 - 小此木鶯太郎の事件簿 問題編』を一足先に体験させてもらう(公式サイト 安楽椅子犯人)。プレイヤーの目的は、倒叙形式で語られる犯人の行動を元に、完璧だと思われたトリックから4つのミスを探し出すこと。何が、どうして、犯人を突きつめることになるのか、を考えることだ。

オーソドックスな本格ミステリ安楽椅子犯人

犯人となるのは、加々美湖を愛するペンション・オーナー芦国暁人(下画像)。一見スラリとした好青年だが、加々美湖のためであれば怒りを露わにする一面を持つ。かつて建設会社社長・犬塚伊作の援助によって加々美湖の美化に成功。しかし、しばらくして犬塚が湖畔にリゾート・ホテル建設を企み、それを危機に思った芦国は殺害を決意する。用意周到に、桟橋の足跡を使ったトリックを考案するが……。

犬塚殺害後から一晩経った朝、ほっとする芦国の前に現れたのは、一人の刑事・小此木鶯太郎(上画像)。彼によって犬塚の死体が加々美湖から発見されたことを知らされる。その職に適しているとは思えない気楽さに、芦国は思わず気をゆるめてしまうが……。

<<読者への挑戦>> 犯人のミスを暴く

一見プレイした感じは、倒叙形式の本格ミステリだが、最終的に刑事・小此木が犯人・芦国を逮捕するまでの過程は書かれない。つまり、刑事・小此木は何かしらのことから犯人が芦国であることを理解するが、そこからは書かれない。しかし、犯人である芦国は気づかれたのではないかと疑心暗鬼になっていく。この終盤が実にスリリングで、刑事コロンボ古畑任三郎の面白さを思い出させてくれる。
そこで挟まれる<<読者への挑戦>>。

プレイヤーは最終的に、犯人が行った行動の中から4つのミスを暴くことになる。個人的な感想だが、3つまでは簡単だ(まず正解だと思う)。ここまで明確にしていいの!? と思ったぐらいだ。ただし、これは芦国が犯人であることにはならない(犯行可能だった程度だ)。
4つ目。最後の1つ。何が臭っているのかまでは分かるのだが、どうして芦国が犯人だと言えてしまえるのか。これ以上書くとネタを全て出してしまうので、ぜひプレイして確かめてもらいたい(本当は、間違っていると実に恥ずかしいので)。

システム面も良好。快適にプレイできる。

プレイ時間は、1週するだけなら分岐点もないので1時間程度。あとは推理するために更に1時間程度。久しぶりにフリー・ゲームをプレイしたことになるが、システム面は実に快適。必要なことは一通りそろっているし、2週目以降のためにキャプチャー毎に確かめられるのも親切だ。当然といえば当然だが、フリー・ゲームをする上で、一番に気にしていたのはここだった。

まとめ

総じて快適にプレイでき、やはり推理することは面白いと思い出させてくれる。<<読者への挑戦>>が特別好きではない人にとっても、ミステリが好きであれば、十分に楽しめる。
公式サイトには、ミステリ作家・大山誠一郎からもコメントが寄せられている。また、スタッフで音楽を担当していた人が第2回ノベルジャパン大賞・大賞受賞・作家デビューというのも面白い。このへん、ライトノベルを好きな方が、ミステリへ興味を示してもらえると期待したい。

スクランブル・ウィザード (HJ文庫)

スクランブル・ウィザード (HJ文庫)

あとは、まあ、あまり書きたくなかったのだけれども、賞品総額10万円。しかも『刑事コロンボ-コンプリートDVD-BOX』入ってるし。欲しいし。というわけで、敵を増やしたくはないので(いや俺本当レビュ書くのやめようかと思ったんだよ、コロンボで)、このへんで。
あらためてプレイする機会をいただいたgMA氏に感謝を。また作成したスタッフ皆様へ感謝を。大変面白い短編を読んだ気分で、硬派なプロットにどことなく懐かしさを感じます。

蛇足

チョイ役にして唯一の女性キャラ・宇山うらら。スパッツ姿に激しく萌えた。