マイナス・ゼロ 改訂新版 広瀬正・小説全集 1

時間SFはどうしてか苦手なんだけど、名作と多々聞かされていた『マイナス・ゼロ』が復刊していたので読む。なんとも飄々としたとでもいうべきか、不思議な作品だった。戦後から戦前へ、タイムマシンで移動してしまったサラリーマンが主人公。なんとか元の時間へ帰ろうとしつつ、助けてもらった家族と一員のように暮らしていく緊張感のなさが、ゆったりと読めていい。そのため、時間SFとしてのしかけはもちろん楽しんだが、東京中心部の事細かな描写なども忘れがたい1作だ。

マイナス・ゼロ (集英社文庫)

マイナス・ゼロ (集英社文庫)