ロバート・チャールズ・ウィルスン 時間封鎖

月と星々が消え、偽の太陽が昇るようになり、スピンの向こうでは1億倍の時間が進むようになった……。突如、地球が黒い幕に包まれたように宇宙から隔離された”スピン現象”。肥大化する太陽から逃れられない地球は、火星をテラフォーミングし、新たな文明を築こうとするが……。その時代を目の当たりにした双子の姉弟と、その姉に恋を抱いた一人の少年の物語。2006年ヒューゴー賞長編小説部門受賞作。
地球の外は1億倍の時間なら、火星をテラフォーミングしようぜ! というのが序盤の大馬鹿ネタ。このネタはどこにでも書かれているが、知らずに読めれば、どんなにビックリしたことか……。ともかく、ガチガチのSFを予想したが(スピン解明はもちろんそう)、中心に置かれたのは双子の姉弟と、その隣に住んでいる少年の成長物語・回想録だ。これまた臭い台詞と、微妙な2人の距離感が続く、洋物青春の醍醐味がたっぷり詰まっている。パニック小説でもあり、本当に最後まで飽きさせずに読ませる。僕はとにかく、洋風”気の利いた台詞”に弱いので、とくに序盤のスピン現象のシーンときたら……一発で今年のベスト1だよ。

時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)

時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)

時間封鎖〈下〉 (創元SF文庫)

時間封鎖〈下〉 (創元SF文庫)