人々の耳に聞こえ始めた二点嬰ハ音。小さな町から始まった謎のツィス音は、精神病か耳鳴りの1つかと思われたが、徐々に広がりをみせはじめる。そして日常生活ができなくなるレベルに達し、ついには首都圏へ。正体不明の大公害問題に発展する前に止める術はあるのか?
公害問題の中でパニックに陥るような話しに思えるが、そうではない。謎のツィス音に対して人々が懸命に対応していく、集団成長物語に仕上がっている。精神病院の奇妙な患者から始まるシーンは、まるでサイコ・サスペンスのようでもあり、どこに向かっているのか分からない点が序盤から終わりまでの魅力になる。そして奇妙な落としどころもマル。どうしてこうハリウッド的パニック小説にならず、明るい未来への歩みを書けたのかが、大変気になった作品だ。ある意味、皮肉的な作品でもあったけれども。
- 作者: 広瀬正
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/08
- メディア: 文庫
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