宮部みゆき 英雄の書

小学5年生、森崎友理子の兄が同級生を刺殺・殺傷し、失踪した。成績優秀、野球でも活躍していた兄が急にどうして? 混乱し、答えを見いだせない中、1冊の古書が友理子に囁きかける。「彼は”英雄の書”に魅入られてしまった」と。”英雄の書”とは? 何故”英雄”が兄を悪事へと導いたのか? どうして兄はクラスメイトを刺してしまったのか……。真実を知るために、兄を助けるために、友理子は見知らぬ世界へと旅立つ。
流石宮部みゆき。『ブレイブストーリー』同様、現実と異世界が絡まりあう構成は本当に気持ちよく、社会要素を上手く入れ、スピード感溢れる1作に仕上げてきた。ファンタジー中心でもあるが、この中で書かれる現実の恐怖は、『ブレイブストーリー』に比べれば小さく収めた印象は強い。しかし、より複雑にしているところが上手さだろう。読み終わってみれば、枯渇していた僕のなかのミステリ分はほぼ満タン。軽いジャブ程度かもしれないが、ここ一番で光らせるタイミングの良さは恐れ入る。

英雄の書 上

英雄の書 上

英雄の書 下

英雄の書 下