浦賀和宏 記憶の果て

親父が死んだ。自殺だった。その理由も分からないまま、大学が始まるまでの日々をだらだらと過ごしていた俺(安藤直樹)は、親父が残したパソコンで、裕子に出会った。会話するプログラム。しかも彼女は、俺の姉だという。裕子は、親父が極秘に進めていた研究遺産なのか? それともただのプログラムなのか。でもプログラムに意思があったなら……。
京極夏彦が推薦文を書いた第5回メフィスト賞受賞作だが、ノベルス版、文庫版ともに絶版のようだ。6月に安藤シリーズ(の世界観で書かれる)新刊『萩原重化学工業連続殺人事件』が出るので、久しぶりにノベルス版を再読。もし何も知らずに本書を今読めば、森博嗣西尾維新の中間地点に立っているような、どっちつかずな古びたものに感じるだろう。しかし青少年の偏見ハードボイルドがノベルスとして刊行されたことで、佐藤友哉西尾維新が出てこれた気はする。早すぎた、ではアホの一声だが。浦賀和宏が大好きなものでして……。

記憶の果て (講談社文庫)

記憶の果て (講談社文庫)