浦賀和宏 記号を喰う魔女

僕が死んだ時、居合わせた人たちを、僕が生まれた島に向かわせてください。誰よりも美しく、指が一本足りなかった織田は、そう遺言に残して自殺した。彼は飛び降りる直前、安藤裕子に何を思っていたのだろう。彼女を恨む坂本真由美は……。そして島に向かった僕(小林英輝)たちを襲う、胸を切り裂かれる連続猟奇殺人。
安藤直樹シリーズ5作目は、2作目『時の鳥籠』(感想)に登場した安藤裕子と小林英輝を巡る過去を書いた、孤島での冒険パニックもの。こんなシチュエーションなのに、こうするのはミステリの1つと呼んでいいのか……(なわけがない)。シリーズ本筋に関わることも言及されているが、それほどのインパクトもない。展開が早く、奇妙な謎も多々あって大変面白く読めてしまえるのだが、なんともいえない仕上がりになっている。こう書いてしまうと、ただのキャラクタ小説になってしまうが、安藤裕子と小林英輝の距離感は再読でも最高だった。

記号を喰う魔女 (講談社ノベルス)

記号を喰う魔女 (講談社ノベルス)