須賀しのぶ 芙蓉千里

明治40年、日露戦争後の満州ハルビン。日本から遠く離れた極寒の地に、花咲き乱れる日本人女郎屋。一人の辻芸人だった少女フミは自ら買ってもらい”大陸一の女郎”になってみせると誓う。怒涛の時代に翻弄される女たちの中で、フミの新しい人生が始まる。
なんという近代アジア版『流血女神伝 砂の覇王』! あの面白さ再び。チンコロ少女が激動の時代を女郎として生きる設定を、須賀しのぶが書けば最高だと分かりきったこと。物語全体はザックリと書かれ、実に展開早く、熱中度高く読めてしまう。しかし先輩女郎たちの一言一手は細かく、様々なシーンを見事に演出する。ある女郎が店一番になった喜びと悲しみの件は、白粉臭さは消し去り、ただただ例えがたい残り香が漂うのみ。コバルト作家らしさを出しつつ、かつ大胆に女郎世界を書いた本書は、須賀しのぶの魅力が詰まった一作。シリーズものとして、時代の選びかたも続編が大いに期待できる。

芙蓉千里

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