ジョージ・R・R・マーティン 洋梨形の男

下宿先の地下に住む奇妙な彼の臭い、濡れた唇、小さな目……。誰もが彼のことを”洋梨形の男”と呼ぶ。誰も彼のことを気にしていないのに、次第に惹かれていくわたしの恐怖を書いた表題作。高校チェス・クラブで残した遺恨を巡り、当時のチーム・メイトが館に集う「成立しないヴァリエーション」他、ホラー・テイスト強いマーティンの短編6作を収録。
ネビュラ賞ローカス賞ブラム・ストーカー賞を受賞した作品が並ぶ、まるでマーティン傑作短編集のような贅沢な1冊。30分完結のSFドラマを見ているようなエンターテイメント性があり、物語への引き込みは素晴らしい。あっという間に没頭させ、すぐにため息をつかせる作品ばかりだ。知らずに暗黒ダイエットに挑むデブの「モンキー療法」、場末のバーで起こる「終業時間」は、気持ちいいほどバカな話。メインデュッシュとなる表題作と、ラストを飾る「成立しないヴァリエーション」はボリュームあり。導入部はミステリに転びそうなのに、それぞれ奇妙な味をひき出す傑作だ。

洋梨形の男 (奇想コレクション)

洋梨形の男 (奇想コレクション)