大森望・編 NOVA 書き下ろし日本SFコレクション 1

大森望が責任編集をする、日本人作家の書き下ろしSFコレクション・シリーズが刊行開始。創元の<年刊日本SF傑作選>の盛り上がりと合わせ、ミステリ好きとしては”出ることが”のではなく、このクオリティと話題性に羨ましくなってしまう。
ある一人の作家を除いては、どれも素晴らしいと感じさせる、それぞれの作家らしさに溢れている(ここが凄い)1冊だ。こうなるだろうと思わせて、その遥か上の悪臭を発揮する、田中哲弥「隣人」の見事な不快ホラー。既存物の料理も上手けりゃ、その皿まで美味しいのが飛浩隆「自生の夢」。ネットワーク下の支配者と従属者の駆け引きを書いた短編だが、その広がりようはまさにSF。読んでしまえば、その絶筆を誰もが嘆く伊藤計劃屍者の帝国」プロローグ。遠く、本当に遠くへ飛び立ってしまった彼を思う描写に、真剣に涙止まらなかった藤田雅矢エンゼルフレンチ」。もっとも読んでよかったと感じさせたのはこの作品だ。
年末ギリギリになったが09年ベストに入れておきたい。