浦賀和宏 女王暗殺

定期点検が必要な心臓を持った俺に降り注ぐ謎。通り魔に襲われた母親が死に際に残したメッセージ、尾行する白いバンに乗った男女、記憶をなくした一人の女。心臓を奪われた男の死体は、俺の出生を探る鍵になるのか……。そして全ての謎は、一つの事件に収束する。
千街晶之の帯”浦賀が描き続けるのは世界のありようへの懐疑なのだ”は流石上手いことをいうな、といいましょうか。松浦純菜シリーズあたりからの手法となった、個人の発するエゴや童貞(コンプレックス)を明確に表した言葉だ。また浦賀和宏は文章での手法だけでなく、それぞれの思いがカタルシスへと経ていく構成も”世界のありようへの懐疑”になっている。この面白さが加速するのは松浦純菜シリーズ中期以降で、本作が安藤直樹シリーズのため既存のファン以外にすすめられないのは、少しだけ残念でもある。

女王暗殺 (講談社ノベルス)

女王暗殺 (講談社ノベルス)