コリン・デクスター ジェリコ街の女

あるパーティーで出会った男と女。二人は同じテーブルで食事をした瞬間に、運命の出会いを感じていた。とくにモース警部は過剰なまでに……。しかし、再開を約束した数ヵ月後、その女性は自宅で自殺を遂げた。本当に自殺なのか? それとも自分がロマンチストなだけなのか? 納得のいかないモースだったが、近所で殺人事件が起こったころから、彼の頭脳は動き始める。
素晴らしい。前作『死者たちの礼拝』に続き、連続して英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞を受賞したことも素晴らしい。またリスキーながらも納得のいくトリックやプロットも素晴らしい(処理の上手さを確かめてもらいたい)。しかし、パーティー会場のプロローグがもっとも素晴らしい。シリーズだからこそのプロローグに、心躍らされるわけはない。念を押すようですが、トリックも素晴らしい出来と、シリーズ中でもわかりやすい仕上がりです。
2月末に、モース警部シリーズが舞台とするオックスフォードまで行った。主にドラマの舞台を歩くツアーがあったので参加してみた。高いリスニング理解力が求められるが、作品名さえわかればなんとかなる面白さで、ファンには是非参加を薦めておく。引率者から「これはハリー・ポッターでも、不思議の国のアリスでも、トールキンでも、大学でもないけど、間違ってない?」と言われてしまった。「モースが好きだから」と本書を見せて伝えると、東洋人の参加は珍しいらしく、とても喜んでくれたのはいい思い出。ただ「モースは日本でも大人気なの?」という質問には困ってしまい、「超マイナーで、絶版になっている」と伝えることは流石にできず。

ジェリコ街の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ジェリコ街の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)