安楽椅子犯人 - 三つの謎宮 - 問題編

3月31日に公開となったフリー・ゲーム、サウンドノベル作品集『安楽椅子犯人 - 三つの謎宮 - 小此木鶯太郎の事件簿 問題編』(公式サイト)をプレイ。これは倒叙形式(犯人視点のミステリ)であり、しかしプレイヤーの目的は、犯人が犯したミスを暴くというもの。解答編は5月上旬ごろ公開予定だ。プレイヤの解答を募集しており、正解者13名には総計10万円相当の賞品が送られる。応募締め切りは4月25日23時59分を予定している。
(追記)4月1日00時、混雑のためダウンロードできない状態になっているようですが、公式にアップローダーなどへの回避が誘導されています
先ず、まとめてしまうが、前作を楽しめたプレイヤは、公式サイトに移って問題ない。面白さや難易度評価を前作同様、もしくはそれ以上と確定だ。犯人視点で追い詰められる興奮や、作品集だけあって全体のボリューム感は前作『湖岸の盲点』(感想)以上。期待感そのままにプレイし、推理する楽しさを多分に味わってもらいたい。
スクリプト担当のgMA氏(id:gma)からの紹介を受け、プレイした感想を。

3月31日に公開となるサウンドノベル安楽椅子犯人 - 三つの謎宮 - 小此木鶯太郎の事件簿 問題編』を一足先に体験させてもらう(公式サイト 安楽椅子犯人)。プレイヤーの目的は、倒叙形式で語られる犯人の行動を元に、犯人が犯したミスを暴くというもの。何が、どうして、犯人を突きつめることになるのか、はプレイヤに委ねられる。今作の作品集は、前作と同じくトリックを用意した犯人から3つのミスを暴く『ひとひらひらら』に、消去法による犯人証明もの『赤と黒の境界』と、アリバイものの失策証明『完璧なアリバイ、あります』が追加された。

前作に続き、探偵役になるのは刑事・小此木鶯太郎。若い容姿とノンビリした性格で、今回も犯人を油断させる。しかし犯人を追い詰める終盤で見せる表情は、犯人への辛辣さ、事件解明の興奮、勝利への確信……。これらを混同させたような表情が、物語や音楽の盛り上がりと合わさって、犯人視点ならではのマゾヒスティックな快感をもたらす。

犯人はあの男でしかありえない 『赤と黒の境界』

借金塗れのギャンブラー・一条伊織は、過去にコンビ打ちをしていた漆間鵜月と再会する。しかし、鵜月は違法ギャンブル店イクステンデッドでディーラーになっていた。再び組もうと提案する伊織だが、ディーラーにとっては命にかかわる禁止事項。なんとか勝ちたい伊織は、鵜月を説得しようとするが断られてしまう。口論の末、衝動的な軽い一押しで鵜月を殺してしまった伊織は、現場から証拠を消すが……。

ギャンブル絡みの物語もスリリングだが、消去法のみで解答せよとの挑戦に心踊らせる内容になっている。作中で提示される文章から、消去法によって”一条伊織のみが犯行可能だった”ことを証明する。つまり”他の容疑者には、犯行が不可能だった”ことを証明すればいい。犯人視点から他人の容疑を晴らしていく、という構成に注目だ。

美女の主張を崩す 『完璧なアリバイ、あります』

隣の島で起こった殺人事件。完璧なアリバイ・トリックを用意した六大路露花は、その時刻にみんなといたことを、捜査にきた小此木鶯太郎に主張するが……。

収録された3作中、もっともシンプルな作品で、プレイヤは彼女が犯した1つのミスを指摘することになる。ネタ要素が強い作品に仕上がっていても、初見で解答にたどり着くのは難しいかも?

オーソドックスな本格ミステリ再び 『ひとひらひらら』

家族のため、娘のために新興宗教・日道会に入った萩坂隼磨。しかし、教祖・久永秀昭に近づくにつれ、彼が金の亡者だと知る。教祖を殺し、金を手に入れれば、娘は助かる。計算し尽された殺人。完璧な偽装自殺。目撃者はいない。この電車に乗れば成功したも同然。隣に座っていた青年、小此木鶯太郎が目覚めるまでは……。

前作を彷彿とさせる、犯人がトリックを用意しての犯罪小説、殺害から証拠隠滅までの過程が書かれた倒叙形式だ。小此木鶯太郎が追い詰めるも、最後の推理(犯したミス)はプレイヤに委ねられる。小此木を目の前に、ギリギリ過ぎる完全犯罪に緊張させられる展開。追いつめられないもどかしさ。もっともボリュームを感じさせ、かつ考える魅力は3作中トップだ。

快適なプレイ感覚は継承

1週目のプレイ時間は3時間ほど(このレビュの準備もあったため、普通に読む時間よりは長いだろう)。最終的には、読み返しなどで6時間ほどプレイした。デモ版をプレイしたが、システム面は前作を継承しているので問題なし。安心してプレイしてもらいたい。

まとめ

快適にプレイできる。追いつめられる快感(不思議!)。推理する楽しさ、もどかしさを存分に味わえる。前作と変わらず言うことなし。ミステリが好きであれば楽しめる。もちろんミステリにあまり触れない読者、ゲーム・プレイヤでも。

謝辞

今回も先行プレイの機会を与えて頂いた上で、「バグあんぞゴラア!」「バグじゃないです。仕様です」「仕様ておまえ糞が、あ、あれぇ……プヒヒサーセン」というやり取りがあったにも関わらず、快くして頂いた紹介者のgMA氏に感謝を。また素晴らしい本格ミステリを、フリー・ゲームを、僕好みの『ひとひらひらら』終盤展開を楽しませてくれた、作成に関わった全ての方に感謝を。2010年公開予定の長編第2弾『陰と陽の犯跡』も楽しみにしています(主役犯人は美幼女ですか?)。