アガサ・クリスティ 春にして君を離れ

バグダッドに暮らす娘夫婦を訪れた帰り、偶然出会った友人の会話から、私ジョーンは過去を振り返る。良き夫、良き子たち、そして良き妻を努めてきたジョーン。良き家庭を築くために力を尽くしてきたが、それを望んでいたのは私だけだったのでは……。
ミステリではない(と言われる)クリスティ(当時は別名義だったが)の6作品より。未来を築きあげるべく力が実にたくましく書かれ、また時にはあまりにも繊細な女性一人の回想が、こんなにも痛々しいとは。そしてこの凄まじいエピローグ……。話題になった某ミステリや某ゲームの原点は、ここにあったのかと感じされる素晴らしいレベルの作品だった。クリスティー文庫を下に表示しているが、読んだのはNV版だ。