島田荘司 御手洗潔の挨拶

嵐の夜、マンションの11階から姿を消し、まるで殺されるために飛び込んで死んだ男「疾走する死者」。たこ焼き屋が盗まれた奇妙な事件に関わったことから、御手洗は誘拐事件にまで首を突っ込む中編「ギリシャの犬」他、短編2編を収録。
「数字錠」は高い評価を得る、納得の作品。僕は決して御手洗シリーズが好きなわけではないのだが、トリックと登場人物たちの心理描写が絡み合う名短編だろう。初期の綾辻行人を思い出させるトリックもありと、時の流れや流行り廃りを感じさせられもした。「疾走する死者」なんて、今になって本当味わい深い作品ですよね。最後に後書きに代えての論述「御手洗潔の志」が収録されているが、これにリアルタイム読者はどんな反応をしたのでしょうか。凄いインパクトだったんですけど。

御手洗潔の挨拶 (講談社文庫)

御手洗潔の挨拶 (講談社文庫)