島田荘司 奇想、天を動かす

浮浪者の老人が消費税12円を請求された末、店の主婦の腹を刺した。老人は黙秘を続けたまま、事件の幕は閉じようとしていた。しかし警視庁捜査一課の吉敷竹史は、老人の過去を追うことで、数十年前の奇妙な鉄道事件に出会う……。
多くの方から、島荘の中でも強く薦められたまま読んでいませんでした。ありがとう御座います。トリックの意味の持たせ方が上手く、流石だと納得させられる一作。不思議な浮浪者が起こした小さな事件から、ゆっくりと事件は膨らんでいく面白さ。最後は綺麗に、静かに萎んでいく美しさ。奇妙さが華々しくも、素晴らしいミステリだった。島荘作品に漂うテーマ性がよくわかる作品で、その魅力を感じやすい。

奇想、天を動かす (光文社文庫)

奇想、天を動かす (光文社文庫)