今年(昨年だけど)はこれがよかった! という自分なりのベスト(05年版)(06年版)(07年版)(08年版)(09年版)。本読んでなかったよね、というすんごいゲームをしていた1年だった。約2/3が海外だったことも合わせて、言い訳としておきたい。あとtwitterに書き過ぎ。これを今さら書く意味もあるのかと思うけど、未来の幼女が読んで役立てることを信じて。
年末に出てくれたベスト集計からかじった2作、貴志祐介『悪の教典』(感想)と梓崎優『叫びと祈り』(感想)が10年度のトップ作であることは間違いない。
両作ともトリックが弱いという声も聞いたが、その後にある奇妙さや気持ちよさに拍手喝采。とくに貴志祐介『悪の教典』の終盤にあるドライブ感と、干からびるかと思うほど乾いたプロローグは忘れられない。梓崎優『叫びと祈り』の巻頭作「砂漠を走る船の道」を読んだ時の好印象も素晴らしい。
あと10年は続編でないだろう、え? 5年後に出たの!? と驚いた児童歴史伝奇小説斉藤洋『白狐魔記 天草の霧』(感想)もあった。歴史上の様々な人物と出会う仙人狐、白狐魔丸は島原の乱を目撃する……。まさかキリスト教内の代理戦争として書かれるとは驚かされるばかり。終わるかどうかは置いといて、人に惹かれていく狐たちの葛藤を見事に表した良作。
残りは過去の名作より、コリン・デクスター『ジェリコ街の女』(感想)とピーター・ラヴゼイ『マダム・タッソーがお待ちかね』(感想)を。タイトルも素晴らしければ、中身も素晴らしい。なんというスリリングでトリッキーな傑作と唸らされた2作品。またデクスターの街オックスフォードを訪れたのもいい思い出で、ウォーキング・ツアーを案内してくれた女性を忘れることはできない。語学学校終了後、2度目の訪問で、大きく理解度が増したこと、ありがとうと言えたことが嬉しかった。
締めは冲方丁『スプライトシュピーゲル』と『オイレンシュピーゲル』の再読。自分の好きな物語と格好良さ全てがここに詰まっている。だからもう表現できないし、あまり薦めることもないだろう(傑作だよ)。エジプトのデモ騒動を見ていると本当面白いし、アメリカ介入の報道なんか「シュピーゲルだ!!」と思っちゃう。マジでリヒャルト叔父さんいるんじゃねえの? ともかく、なんか年内に新刊出たら、また再読してそうな気がする……。