デイヴィッド・ゴードン 二流小説家

ポルノ雑誌の人気SM女王の正体は、冴えない小説家ハリー。吸血鬼、スペースオペラ、ミステリを発表し続けるも、作家たちへの嫉妬は日々溜まっていくばかり。出て行ったガールフレンド、馬鹿にする女子高生、そして告白本を書いてくれと依頼してきた連続殺人鬼……。鬱蒼とした日常から一転、もしかしてベストセラー作家の仲間入りできる!?
ブライアン・グルーリー『湖は餓えて煙る』(感想)と同じくアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞候補作になっている1作。皮肉とユーモアに溢れ、そんな不器用な自分にへこんでしまう二流小説家ハリーが主人公。ダメな日常も十分可笑しいのに、連続殺人鬼との非日常が交差していく中盤からが読みどころ。発表した小説の断片が挟まれ、事件の真相や出会う人々との葛藤が書かれる妙技も読んでほしい。まさかこんな物語になっていくとは!? とスリルに満ちたまま最後まで読めてしまう面白さ。奇妙な構成、意外な真相が仕掛けられていて、話題になるには十全な1作だ。読み終えれば、間違いなく満足しているだろう。可憐で聡明な女子高生クレアの魅力も合わせて、是非とも手にしてくれと頼みたくなる小説だ。

二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)