アラン・ブラッドリー パイは小さな秘密を運ぶ

英国の田舎で静かに化学実験に勤しむ、11歳の少女フレーヴィア。ある日、窓辺に放置された小鳥の死体には、切手が咥えられていた。それを見た切手好きの父は酷く怯えてしまった。翌日の早朝、フレーヴィアはキュウリ畑で赤毛の男の死に立ち会ってしまう。この人は、昨晩に父と書斎で喧嘩していた男……。
ミステリでこんなに可愛い少女がいたか? いや、いた……。ともかく、1950年代の古き美しき、少女の心情と情景豊かな英国が舞台。母を亡くした3姉妹の末っ子、おしゃまさんで化学大好きフレーヴィアが主人公で、、その会話と知識は刑事顔負け。しかし事件は化学知識だけでなく、フレーヴィアの行動によって大きな背景を紡いでいく。英国推理作家協会CWA賞やアガサ賞を受賞した他、9冠は伊達じゃないプロットも見事だ。傑作のデビュー作だ。シリーズ全6巻が予定されていて、家族のこと、自分の将来、激変する時代……、成長していく彼女の姿を楽しんでいきたい。

パイは小さな秘密を運ぶ (創元推理文庫)

パイは小さな秘密を運ぶ (創元推理文庫)