中田永一 くちびるに歌を

長崎県五島列島のある中学合唱部、誰もが慕った松山先生が産休に入るため、代わりにやってきたのは美しすぎる柏木先生。しかし彼女は元神童なのに自称ニートで、得意なのはWiiのリモコンを振ること。彼女目当てにやってきた新規男子部員との対立。ラブレター。告白。Nコンへの練習と本番。そして誰にも言えない、見せられない秘密のこと。拝啓、十五の君へ。あの頃のわたしは誰を好きでしたか? 今わたしは、どうしていますか?
年末になると中田永一が新刊を出してくれるのはいいね。今作は田舎の中学を舞台にした男の子・女の子の青春部活・初長編。といっても独特の軽さから、まるで中編を読んだようなアッサリ具合に感じるだろう。しかしまあ、上手いね。Nコンへの課題曲「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」の使い方、複数視点なのにハッキリとわかるキャラクタたち。そしてさり気なく書かれた伏線、凄すぎ。あまりにもパンチが強くて大笑いしてしまった。古野まほろ『天帝のはしたなき果実』(感想)もそうですが、音楽と青春の食い合わせは、どうしてこうも美味しいんだろうね。僕も和楽器をしていますが、この”永遠に終わらなければいいのに”をまた体験したい。

くちびるに歌を

くちびるに歌を