サラ・グルーエン サーカス象に水を

逃亡した動物たち。パニックになった観衆。異常事態を知らせるマーチ。僕は喧噪の中で、彼女と目があった。輝かしい未来から一転、極貧の移動サーカスで過ごした青春の日々、捨てられる仲間、芸のできない象。そして素晴らしい踊り子の彼女。僕は彼女の衝動を止めることはできなかった。
今年のベストに入れる1冊が決まった。最初に事件ありきで、不穏な空気になっていく移動サーカス団。構成はシンプルながら、独特の舞台と禁断の恋愛物語がマッチして、グイグイと引っぱってくれる。そして読者の緊張が張りつめているところで起こる事件、とまあ、見本のような物語だった。これは地味に薦めていきたい1冊。読んだ人間にしかわからない素晴らしさがある。

サーカス象に水を (RHブックス・プラス)

サーカス象に水を (RHブックス・プラス)