昨年はこれがよかった! という自分なりのベスト(05年版)(06年版)(07年版)(08年版)(09年版)(10年版)(11年版)。圧倒的に増えた仕事と出張、遅々として進めなかったポケミス、膨大かつハイペースで文庫化された『氷と炎の歌』シリーズを言い訳として、今年とても印象に残ったベスト作品は以下の3作。
倒産という結果は残念だけど、まだまだ読み落としている作品があるのかと怖くなる。武田ランダムハウスジャパンから、ヴィカス・スワラップ『ぼくと1ルピーの神様』(感想)とサラ・グルーエン『サーカス象に水を』(感想)の2作を。圧倒的な面白さと、この終盤の切れ味。ミステリはエンターテイメントとしてあるべき(とは限らないが)理想はこれだろう。
デニス・レヘインは『スコッチに涙を託して』(感想)に続く、ボストンの私立探偵シリーズ第2弾『闇よ、我が手を取りたまえ』(感想)。シリーズ1作目とは違う、この濃厚さ。この密度。この愛。家族の全て。早々に3作目を読みたくなるほど、このキャラクタたちは読者を飢えさせる。
早川ポケミスを可能な限り読むようになって(シリーズ途中、前作を必要としない限り)2年。12年度はこれで決まり。圧倒的な興奮と、その創作力に酔いしれた1作はこれ。
『檻の中の女』(感想)『キジ殺し』(感想)に続く、「ガラスの鍵」賞を受賞したシリーズ3作目、ユッシ・エーズラ・オールスン『特捜部Q Pからのメッセージ』(感想)。あまりにもドライブ感が強くて、読む手を止められなかった傑作。こんなミステリ(謎にならなかった謎)があったか。
また早川から『氷と炎の歌 改訂版』文庫版が、第1部『七王国の玉座』改訂版(感想)、第2部『王狼たちの戦旗』改訂版(感想)、第2部『剣嵐の大地』改訂版(感想)と連続で刊行されたので、今までと変わらず熱心に再読してしまった。登場人物名、地名、俗称などの変更が大きく話題になったりもしたが、それをまとめた改訂版が刊行。やはり初代訳者の持ち味とセンスは、これ以上でもこれ以外でもない。
山村で育った狩猟の少女カリエは、雪嵐の中で男にさらわれる。目覚めた先でカリエは病弱な王子の代わりとして、王位継承への影武者を強いられる。剣の達人で冷徹なエディアルドと共に、少女は少年たちが待つ皇族の世界へ入るが……。コバルト文庫で人気を得た全25巻の大河少女小説”流血女神伝”開幕。
12年1月に須賀しのぶ『流血女神伝 帝国の娘』(感想)が角川文庫から再販。しかし1年経っても続きの知らせはなし……。他シリーズなどを精力的に書いている作者なので(そういえば読み忘れていた)ゆっくり待ちます。作者によるシリーズ同人誌『光来る島』(感想)が11年1月だった。
最後は恒例、ここ3年はシリーズ通して再読している冲方丁のシュピーゲル・シリーズで締めたい。まるで再読していることが、その行為を可能にさせている心が、ここにあることが、幸せなのだ。いや本当、喉がカラッカラで死にそうなんですけど、今年こそ出ることを願って。