恩田陸 光の帝国 常野物語

ある人は膨大な量の書物を記憶し、ある人は遠くを見通し、ある人はその者たちを見守り続けてきた……。不思議な力を持った人々は息を潜めながら、現代社会でその運命を受け入れていた。ひっそりと暮らす常野一族を書く連作短編集。

蜜蜂と遠雷』を読む前に、素晴らしかった記憶があったのでこちらを再読。それぞれの物語が染みる染みる。一族に生まれたわだかまりと、その運命への嬉しさを巧みに書く。表題作は、常野の人々ではない読者まで、その世界に吸い込んでしまう。誰もがあの一節で心を震わせることだろう。再読しても一級品。忘れたころにまた読みたい。

光の帝国―常野物語 (集英社文庫)

光の帝国―常野物語 (集英社文庫)