有栖川有栖 江神二郎の洞察

1988年4月、英都大学に入学したばかりの僕は、推理小説研究会に入部する。ある人とぶつかって落ちた1冊の縁がきっかけだった。アリス最初の事件「瑠璃荘事件」。八坂神社から帰る大晦日を書いた「除夜を歩く」、マリアとの出会いから入部までを書いた「蕩尽に関する一考察」など短編9編を収録。

2012年の発売当初にハードカバーで購入して、ここまで寝かせてしまった。シリーズらしい作品もあれば、有名古典ミステリーのオマージュもあり、物足りないけど寂しさは埋めてくれる1冊。「ハードロック・ラバーズ・オンリー」はビックコミックに掲載される読切のようなエモさ。あっさりしているけど、こういう作品が読みたいとなお切望する「桜川のオフィーリア」が格別。誰もが思うことですが、早く新作長編が読みたい。