有吉佐和子 悪女について

謎の墜落死を遂げた、美しき女性実業家・富小路公子。それは投身自殺か、それとも他殺だったのか。ある男は簿記学校で真面目に学ぶ可憐な少女だと語る。ある女性は死んでも許されない詐欺師だと語る。ある少年は心優しいたった1人の母だったと語る。戦後を生き抜き、事業を成功させた女の正体は……。

書店で「昭和のミステリー第1位(と言っても過言ではない)」とあったので読んでしまった。 27人によって形作られていく1人の女性像、鈴木君子あるいは富小路公子。文章の間から見える時代背景は鮮やかで、それぞれの視点で描かれる君子像の瑞々しいことよ……。時代背景や主人公の性格など、広瀬正『エロス』を彷彿とさせる名作だった。ミステリーの結末から、彼女の言葉づかいや人々の心理描写、細部まで素晴らしい小説だ。

悪女について (新潮文庫)

悪女について (新潮文庫)

  • 作者:有吉 佐和子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1983/03/29
  • メディア: 文庫