久田樹生 「超」怖い話 死人

怪異との遭遇は事故にあうようなものかもしれない。ある日突然、防ぎようのない恐怖に出会ったとき、人はどう判じるのか。取材による実話怪談28編を収録。

元ヤクザが飲食店を経営した末の「精算」。いじめられっ子の幽霊が現れる「価値なし」。スナックのママが語る「喰い合う」。デザイン会社に持ち込まれた「五寸釘」。収録作は多くはないものの、強烈な印象を残す作品が多い。久田樹生はアンソロジーでも覚えているエピソードが多く、気になる作家が増えてしまった。シリーズ通して読んでいこう。

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金田直久 白装束集団を率いた女 千乃裕子の生涯

2003年4月、突如メディアに追われた白装束の集団。白布と謎のデザインにデコレーションされたキャラバンの正体「千乃正法会」あるいは「パナウェーブ研究所」とはなんだったのか。教祖である千乃裕子の生涯を追いながら、事件の全貌を解説する。

本書はとても悲しい女性の物語だ。多数の信者を率いたGLAの存在感に負け続けた。親には認められなかった。数少ない仲間には裏切られ批判され、離れていった。圧倒的なカリスマ性の大川隆法が出現した。神の言葉が示すような崩壊を迎えそうにない。最後は敵に怯えながら動物や虫を愛した千乃裕子。彼女から暴言を受けても世話をしてくれる信者の人々がいた。その献身に気づかずに終えた千乃裕子に、猛烈な悲しさを感じた。1つの新興宗教を解体すると同時に、何者にもなれなかった、実在した女性を追う傑作だ。

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黒木あるじ 黒木魔奇録 狐憑き

夜中にかかってきた番号不明の電話。クリックしたアクセス先。いつもと違う帰り道。あの時の出来事は、誰かに語れば断ち切れるのか。

人がいないから、家にいる時間が長いから気づく怪異がある。震災に続き、コロナ禍での実話怪談も収集する。病院怪談はいくらでもあるのに後味残る「みてる」。ここから始まる「みえた」「みえない」がまさに最恐。奇妙な匂いにまつわる怪談「天然」が無邪気なエピソードでよかった。

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