黒木あるじ 怪談四十九夜 鎮魂

新しいアルバイト先に来たお客さんが。学校の先生の一言が。旅先で見たテレビ番組に映ったあれは……。気づいてしまうと、今までの日常には戻れないのかもしれない。現代実話怪談の作家たちによる49話。

祖父宅で食卓に出た「赤いゼリー」(真白圭)。工作で作った人形が動き出す「ダンボールマン」(神薫)。妻の実家で行われる正月の恒例行事「数珠繰り」(つくね乱蔵)。多くの凶作が収録されている中、最後に収録されている黒木あるじの複数話によって、全てを吹っ飛ばしながら読み終えることになる。

阿賀沢紅茶 西馬舜人 正反対な君と僕 サニー&レイニー

少年ジャンプ+で大人気連載中の等身大ラブコメが初の小説化。いつものように元気に投稿した鈴木だったが、谷くんの様子がいつもと違う? 山田に好きな本を貸した西さんは感想が気になって……。少し違う日常を3組の視点で書く連作短編集。

私が知っているラブコメといえば、主人公の周りを複数のヒロインがにぎやかに距離感を測る物語で、主人公ピッチャーが圧倒的に強い野球漫画のような印象だ。今は全員野球のような、周囲とのバランスを考えながら恋を進めるのがトレンドなのだろう。原作マンガ「正反対な君と僕」の大ファンで、文章で読むと解像度が上がる。彼ら彼女らはもっとストレートに生きてもいいのにとも思う。

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高野秀行 【カラー版】ミャンマーの柳生一族

探検部の先輩、舩戸与一に誘われた取材旅行先はミャンマーだった。監視役の案内人たちから見えてきたのは、ミャンマーの軍事政権は武家社会? 幕府が送り込んだ柳生一族と南蛮人の死闘が始まる……。

近著が話題になっていたのでハイハイとんでも伝奇と思って読み始めると、舩戸与一との珍道中を書いたルポタージュだった……。街は牧歌的で、裏柳生と呼ばわる面々は人懐っこく、のどかな旅の様子はロードムービーのよう。心地よさの中にミャンマー情勢を挟み、その分析はビリリと辛い。

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