菅野仁 友だち幻想

「みんな仲良く」と言われてきたけど、たまたま同じタイミングで集まった人たちが上手に繋がれる? 上手な距離感覚を磨いて、人間関係を見直す1冊。

ベースとなる村社会構造から近代化できず、人間関係は現代社会で大きな悲鳴を挙げることになった。しかも年代によってギャップがあるからなお大変。近づくことが好きな人もいれば、距離を測り続ける人もいる。「一緒にいれる人」と出会えたのは本当に幸せなんだ。「誰とも付き合わず、1人で生きる」こともできる。その上でどう「人と付き合っていく」かを、これからも考えていきたい。

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内藤正典 ちくまQブックス トルコから世界を見る ちがう国の人と生きるには?

世界規模の問題である、環境・貧困・差別・戦争など。解決のためには国を越えて取り組まなくてはならない。そのためには異文化を知ることが重要になる。アジアとヨーロッパに挟まれ、様々な力に翻弄されてきたトルコに学ぶ。

東西、イスラム教とキリスト教に挟まれたトルコ。政教分離を選んだ歴史的背景を丁寧に解説する。しかし解決が見えない民族問題を抱え、激変する世界情勢への模索はまだまだ続く。イスラム教研究者の著者が世界に向ける眼差しは、とてもとても優しい。「教えて! タリバンのこと 世界の見かたが変わる緊急講座」と合わせて読んでほしい。

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小川哲 君が手にするはずだった黄金について

同級生の片桐との縁は高校の卒業とともに終わった。今は億万長者の投資家インフルエンサーとして活躍する彼も、告発によって大炎上していく……。主人公・小川哲が体験したあの3月11日の前日、3月10日。偽物のデイトナをめぐる物語。

オカルトやインテックなど、小川哲の面白さを分解してそれぞれの1編に存在する。全て小川哲の私小説風物語であるのに、噛み応えと舌触りが全て違って、満足感と同時に少しだけ物足りなさもある。

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