宮澤伊織 裏世界ピクニック5 八尺様リバイバル

裏世界で夜を過ごした空魚と鳥子。それぞれ距離感を悩む中、新宿ラブホ女子会が開催される! 内面を写す裏世界の鏡。ただ1軒だけの豪華な洋館。そしてふたたび八尺様を求めてより深く、より遠くへ。

巻を通して高い山に挟まれた穏やかな谷のような印象。でもそれが素晴らしい。裏世界を散策する中、奇妙な洋館に出会う「マヨイガにふたりきり」は、長編マンガの修行編のようなサブエピソードであり、だからこそのコミュニケーションがたまらん。マンガでも物語の“間”が最高なのありますよね。6巻は盛り上がってくれそうで楽しみでしかない。

王谷晶 ババヤガの夜

力だけで生きてきた新道依子は、暴力沙汰から腕力をその筋に買われ、会長の1人娘を紹介された。与えられた任務は学校とお稽古、家だけを往復する彼女を護衛すること。歳の変わらぬお嬢さまが何を考えているのか分からなぬまま過ごす依子だが……。

怒涛の結末に突入した瞬間、読書という快感が絶頂を迎えた。間違いなく今年のベスト。1ページ目からトップスピードで走りだす気持ちよさ。拳が顔面にめり込む快感と、骨を砕いた痺れが伝わってくるようだ。それに、かっこみ飯を美味そうに書く作者は信頼できる。短距離走のようなボリュームがいいんだけど、このテイストでもっと読みてぇ……。

ババヤガの夜

ババヤガの夜

 

我妻俊樹 忌印恐怖譚 みみざんげ

実話怪談48話を収録。

様々な作家による共作・瞬殺怪談シリーズで知った我妻俊樹が、単独で立ち上げたシリーズ第3弾。「山の牧場」など有名な実話怪談はたくさんあるけど、それに並ぶ印象を残す「ガタガタ」を収録。40歳を境に人生が一変すると言われた女性の様子と家族の巻き込みかた、そして余韻の悪さはなかなか……。 

忌印恐怖譚 みみざんげ (竹書房文庫)

忌印恐怖譚 みみざんげ (竹書房文庫)