我妻俊樹 奇々耳草紙 5 憑き人

奇怪、異様、不可思議な話しに聞き耳をたてていると、いつか自分も体験することになる……。実話怪談53話を収録。

我妻俊樹といえば「忌印恐怖譚」シリーズが好きで、このシリーズも読んでみた。語り口、ほどよく短い1話のボリューム感、そしてじわっとくる余韻が素晴らしい。

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芦沢央 火のないところに煙は

神楽坂を舞台にした怪談を書かないかと依頼を受けた、作家の「私」は奇妙な占い師の話しを聞くことになる。広告に残されたメッセージ。見えない動物らしき何か。未来を視る隣人。それは偶然か、それとも人為では説明できない怪異なのか。

静岡書店大賞受賞だけでなく、週刊文春ミステリーベスト10で5位、このミステリーがすごい! 10位、ミステリが読みたい! 7位とランクイン。違和感が残る紹介者の書きかたが絶妙で、怪談でもあり、ヒューマン・ホラーとしての完成度がかなり高い。アドバイザーや拝み屋の信頼しきれないキャラクター描写はぜひ読んでほしい。千街晶之の解説含めて、書き下ろしの最終章、表紙裏まで怖い。

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山我哲雄 キリスト教入門

キリスト教が誕生してから2000年。ユダヤ教を母体に始まり、世界宗教へと独立発展し、諸教派へと分かれていく。その歴史と思想、文化へ与えた影響の深さとは。異文化理解のための、教養としてのキリスト教入門。

キリスト教入門』もまさにその言葉のとおり、歴史的背景と合わせて拡大していった流れを説く。ユダヤ教の一部として成長し、1000年後には東西ローマ帝国による大きな節目を迎え、さらに500年後にはプロテスタントが出現して今日に至る。「いい新書だった……」という満足感以外、とても表現し難い。参考までに以下の記事から引用する。

全体的に見れば、本書(石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』)の内容はおおむね「教科書的」で奇をてらったところがなく、「斬新」な印象を与えるものではないかもしれない。だが最新の研究成果をふまえつつ、誰もが手引きとすることのできるスタンダードな本を書くというのは、熟達した専門家にしかできない仕事である。 

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