森博嗣 オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei’s Last Case

孤島にあるオメガ城への招待に応じた6人の天才研究者と1人の雑誌記者。招待状にはマガタ・シキの名があり、サイカワ・ソウヘイも出席に応じた。執事も主催者を知らない中、和やかな晩餐がスタートする。その深夜、悲鳴で目が覚めた参加者たちは、異常な事態を知るが……。

S&Mシリーズから続くサイカワ・ソウヘイを巡る物語が完結(本当にそうなの?)。某ミステリーと概ね同じと気づいたのはともかく、ただただサイカワ・ソウヘイが話して動いているだけで嬉しい。懐かしいキャラクターが言葉の節々にも登場し、まるでディナーショーのような1冊だった。暦年のファンで集ってワイワイと話しをしたくなる面白さだった。

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高橋裕子 津田梅子 女子教育を拓く

1871年使節団の一員として渡米した津田梅子。11年の教育を経て帰国した日本には、彼女の居場所は望んだものではなかった。女性のために役立ちたいと願った彼女は、再びアメリカでの教育を受け、日本人女性の高等教育の礎を築いていく……。

渡米先の家族との書簡をくり返し、様々な女性との交流を大切にした津田梅子。言葉通り、シスターフッドと呼ぶ愛に恵まれた人生だった。当時のアメリカがヨーロッパ以上に女性の社会性を重視していた様子や、梅子が生物学を学んだ背景など、なるほどと感じさせる1冊。彼女の父が明治維新による社会情勢の変化をいち早く感じ、渡米を促したエピソードに、歴史の面白さを感じずにはいられない。やっぱり歴史には理由があるんだ。

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荒木あかね 此の世の果ての殺人

小惑星テロスが阿蘇に激突すると発表され、大混乱に陥った世界。パニックで廃墟化が進む太宰府で、小春は教習所に通い自動車の教習を受けていた。年末、教習車のトランクから滅多刺しの女性死体が見つかり、元刑事の教官イサガワと捜査にでることに。

史上最年少で第68回江戸川乱歩賞を受賞。各評判がよかったので読んでみたが、世界観とよく絡んだ堅調なミステリーだった。なによりも最高だったのは、歪な世界で真っ直ぐ生きようとする教官イサガワのキャラクター。ダーティーな行為にも及びながら、懸命に捜査を進めようとする姿勢が沁みる。不器用さと賢さと、正義感に溢れた女性像に魅かれた。キャラ萌えする年でもないと思っていたけど、久しぶりの感情だったな。あたりまえだけど、続編を望めないのか……。

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