小野寺哲也 田野大輔 検証ナチスは「良いこと」もしたのか?

アウトバーン建設や、失業率を低下させた政策、家族手当に福祉厚生など、国内外で議論される「ナチスは良いこともした」という言説。功績とされるエピソードを、ナチズム研究の蓄積からその背景を解説する。

知人が購入していたので読んでみた。ナチスが行った数々の政策の裏には、脱略や差別、虐殺といった絶対的な悪が存在した。国営のために政策者の利を産み、特定の人々に不利益があってはならない。森博嗣が「政治とは不満を薄めることだ」と書いていたが、ナチスの活動は政治とは呼べない、まさに独裁であった。一つひとつの項目がとても納得させられる1冊であった。ツヴァイク『チェスの話』の背景を知る上でも参考になった。しかしながら人単位で考えると怖くもある。今、スキャンダルを起こしたとして「良いこともした」とのフォローは許されないのだろうか。

ナチス善悪論争については以下の書評も参考にされたい。

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朝宮運河編 てのひら怪談 ずっとトモダチ

たった3ページでもこわ〜いお話し50編を、ホラー・児童書の人気作家10名の手で収録。

小学生向けの怪談・ホラー本の多さは知っていたけど、実話怪談の実力作家たちの作品が読めるとは。しかもシリーズ3作目まで出ているという……。読者と同年代の子どもを主人公に、通学や友だち、学校などを舞台にしているので共感を呼ぶだろう。その中で実力を発揮し直球勝負を仕かける芦花公園にドン引き(いい意味で)。他と重複する内容ではあるが、ローカル怪談を書いた黒木あるじ「ぢんぬるさま」は最高の1編。疲れで読書欲が弱まる夏に、こういった1冊が嬉しい。

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染井為人 震える天秤

軽トラックに乗った高齢者がコンビニに突っ込み、店員が死んだ。加害者は認知症との疑いに、ライターの俊藤律が取材を進める。関係者を繋げていく中、俊藤は奇妙な風習の残る村・埜ヶ谷村にたどり着く。

夏の文庫フェアから読んでみた。年に2、3冊、ミステリ風の話題作を面白いから一気に読んでは「好みではなかったな」で感想を終えている。

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